最近読んだ本の話をば。
このサイトでも何冊か紹介していますが、私はグルメエッセイや料理に関する本が好きです。
グルメや料理に関する本を読んでいると、どことなく平和な気分になりますし、書かれている美味しそうな料理に空想を広げるのも楽しい。
そんなこんなで、グルメや料理に関する本を好んでよく読んでいます。
美味しそうなグルメ本も好きですが、一方で世界の珍しい料理にも興味が。
世界中の料理が味わえる日本でさえ、見たことも聞いたことものないような珍しい料理とその感想が描かれているとワクワクします。
ある意味、秘境探検や冒険もののエッセイや体験記を読んでいるよう。現実にはあるんだけれど、まったく未知なる世界を垣間見えるところが好き。
今回紹介する本は、そんな世界の珍しい料理を扱った本でも、私が読んだ中で群を抜いて奇妙な料理ばかり取り揃えている「辺境メシ」。
これは世界のゲテモノ料理本なのか、それとも文化人類学上貴重な本なのか。とにかく未知の料理のオンパレードです。
世界には珍しい料理(ゲテモノ?)で溢れている
世界の珍しい料理(ゲテモノ系含む)といえば小泉武夫先生が有名
この「辺境メシ」という本は高野秀行さんというノンフィクション作家の方が書かれた本。
世界中飛び回り、その地域でしか食べられていない、決して世界で人気になることはないだろうディープな料理に迫った本です。
世界の珍しい(奇妙?)な料理(ゲテモノ系)についての本といえば発酵などで有名な小泉武夫先生の著書などが有名。
私も何冊か読んだことがありますが、こんなものまで食べるのか、体に悪いのじゃないか?とも思うような奇妙珍妙なものまで口にしています(参考:【グルメエッセイ?】発酵と奇食の大家、小泉武夫が感じた「不味い!」)。
「辺境メシ」でも小泉武夫先生に触れられていますが、先生の著書に負けず劣らずの強烈で珍しい料理のオンパレード。インパクトの点で言えばこの「辺境メシ」の方が強いぐらいです。タイトルにある「ヤバそうだから食べてみた」は伊達ではありません。
インパクトが強い!「辺境メシ」
とにかくこの「辺境メシ」はインパクトが強い。今まで読んだ世界の奇妙な料理やゲテモノを扱った本の中でも群を抜いて珍しい料理が出てきました。
エイを発酵させた刺身「ホンオ(ホンオフェ?)」や世界一臭い缶詰「シュールストレミング」なども出てきますが、まだ可愛い方(小泉武夫先生の本や漫画「もやしもん」にもでてきます)。
サルの脳みそや水牛の脊髄炒め、虫料理に麻薬系(現地では普通に食されている)の料理まで様々。
正直、喰おうと思えば何でも食うことができるんだなと妙な感心も。もちろん食糧事情や社会や文化構成も違いますので、その地域で歴史的に手に入りやすいものから料理の文化も構築されていったことでしょう。
そうした中で、貴重な蛋白源をどこからとるか、一つの動物をどこまで食らい尽くすか、疲れた時は気分がハイになる植物で乗り切るなどの食文化が構築されていったのだと思います。
そういうことも考えさせられる「辺境メシ」の中でとりわけインパクトの強い、私の感覚からいえばゲテモノな世界の珍しい料理をご紹介。
インパクトが強すぎる世界の珍しいゲテモノを紹介
糞というよりも吐瀉物?「ヤギの糞スープ」
中国のトン族というところで食べられている料理。現地の言葉を翻訳機にかけたところ「ヤギの糞スープ」と出てきたそうな。
どぶ汁のような見た目に、羊のモツが浮かんでいるような料理。味は悪くないらしい。
よくよく聞いてみると、糞ではなく胃の内容物で作ったスープみたいです。つまり糞ではなくヤギのゲ○で作ったスープ。
このヤギは高山の様々な草を何種類も食べているので、その胃の内容物も薬効があり体にいいと伝えられているんだとか。
いくら薬効があるからって、なかなか「はい、そうですか」と食べづらい料理(ゲテモノ)。現地の人ならいざしらず、これを躊躇なく食べる著者の高野秀行さんに脱帽です。
ペルーの「ヒキガエルジュース」
一応生のヒキガエルではないようです。しかしスープではなく、あくまでジュース、甘い味付け。
ペルーの一部ではでは強壮剤として飲まれているのだとか。内臓と皮を取ったヒキガエルを茹でて、ミキサーにかけ、ハチミツや様々な植物、ラム酒などで味を整えてできあがり。
高野さんの感想では、たしかに強壮効果というか、元気になる感じはあったのだそう。
ところ変われば品変わる。ヒキガエルで威勢をつけるという珍しい国もあるのですね(まずヒキガエルを飲み物にしようという発想が世界の広さを感じる)。
「君の名は。」で有名になった「口噛み酒」のリアル
以前話題になった映画「君の名は。」で広く知られるようになった口噛み酒(これも「もやしもん」にも出てきます)。
「君の名は。」のストーリーの重要な部分にも関わってきますし、興味を持たれた方も多いのではないでしょうか。
「君の名は。」ではたしか米を噛んで口噛み酒を作っています。これは唾液に含まれるアミラーゼという酵素の力を利用して米の糖化を促すためです。
さて、「辺境メシ」では現在にのこる口噛み酒が紹介されています。アマゾンの話ですが、今ではほとんど作られない貴重なものだとか。
さて、その貴重なリアル口噛み酒。現実には「君の名は。」で描かれているロマンチックなものでもなんでもなく、かなり生々しい。
アマゾンに住むおばちゃんが、マッシュポテト状の芋を口に詰め込み、ガシガシと噛んで鍋の中に吐き出す。これを繰り返してベースをつくり、発酵させて口噛み酒はできるのだとか。
「辺境メシ」の中でも「凄い」、「ロマンチックさ皆無」、「別の意味で官能的」、「まじ、すげーよ!」など口噛み酒を作る様子のインパクトは特別だったよう。
この口噛み酒の様子はかなりページ数をさいて書かれているので興味のある方は是非読んでほしいです(ちなみに味はヨーグルト・ドリンクみたいで以外と飲みやすいとのこと)。
【グロ注意】衝撃度ナンバーワン「胎盤餃子」
「辺境メシ」の中でも一番インパクトを受けたゲテモノ。本書には色々衝撃的な世界の珍しい料理が掲載されていますが、まだそれらは「食材」として見れなくもないようなものばかりでした。
しかし、この胎盤餃子は絶対に無理。素材が人間の胎盤なのだもの。中国人はどんなものでも料理して食べると聞きましたが、さすがにそれは。。。
一部の人の間では、胎盤は万病に効く特効薬として崇められているのだとか。これはさすがに、読んでいるだけで「うーん、、、」と暗い気持ちになりました。ゲテモノ云々の前に、倫理的な嫌悪感がでかいです。
よしわるしはここでは書きませんが、「辺境メシ」の衝撃度では間違いなくナンバーワンのものです(タイトルにある「ヤバそうだから食べてみた」のレベルを超えてる??)。
「辺境メシ」は珍しさだけでなく文化的な面の考察も面白い
ありとあらゆる、世界の珍しい料理やゲテモノが「辺境メシ」にはでてきます。
正直、読んでいるだけで「ウッ、、」となるような、こみ上げてくるような食べ物も出てきます。できれば食前食後に読むのは控えた方がいいでしょう(「辺境メシ」の冒頭にも「食事中に読まないこと」との注意書きも)。
そういうゲテモノや珍しさもありますが、それ以外の部分での面白さも多分にあります。
手に入るものをいかに食材として料理に取り入れるか。何を食べれば心身の健康にいいのか。各地域での経験の中で蓄積されていった技術の集大成が「辺境メシ」で描かれる珍しい料理の数々。
たとえば口噛み酒の章では、こういうものができた背景には昔神様や先祖の霊に食物をお供えするとき、母親が赤ちゃんにしてあげるようにあらかじめ噛んでからお供えしたのではないかという考察も載っています。
実際に、その場所に行き、その文化の中に身を置き、その光景を見て舌で味わうことがなければ決して出来ないような考察が「辺境メシ」では語られています(参考:個性派女優片桐はいりさんの気楽なエッセイ「グアテマラの弟」)。
特に麻薬的成分のある食材などは、世界的には良くないとされていますが、その土地の気候風土や文化に身を置かねばそれが愛されている理由もわからないことでしょう。
「辺境メシ」はそういう文化的な発見も楽しめる世界の料理本でした。
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