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「パンズ・ラビリンス」の考察【現実か空想か?】

パンズラビリンスとペイルマンおすすめ映画

まれに、ずっと観たいと気にはなっているけれど、なかなか手のつけられない映画っていうのがあると思います。

どこかでちらっとあらすじを聞いた、ワンシーンだけ知っているなど。ものすごく気にはなるけど、なかなか観るにいたらない。

今回紹介する「パンズ・ラビリンス」も、私にとってその類の映画。

この映画で登場する、ペイルマンという怪物の造形がものすごく気になっていて、いつか観たいなと思っていたけれどいままで放置。

昨晩ようやっと観たのですが、思いの外ダークにしてグロ。虚実入り混じった展開と、常に不安な空気が漂う怖さ。そして期待していたペイルマンのインパクトたるや!

ペイルマンの魅力とともに、ストーリー的にも現実なのか空想なのか曖昧な部分が多かった「パンズ・ラビリンス」の考察をしたいと思います。

※映画のネタバレも含みます

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「パンズ・ラビリンス」の怪物「ペイルマン」が怖い!

ギレルモ・デル・トロ監督「パンズ・ラビリンスの」あらすじ

まずは「パンズ・ラビリンス」の簡単なあらすじをば。

時は内戦時代のスペイン。主人公の少女オフェリアは妊娠中の母とともに、母の再婚相手である独裁政権陸軍のヴィダル大尉がいる砦に引っ越します。

大尉は残忍な性格で、その地域のレジスタンス掃討の任も受け持っていました。

オフェリアはそこで孤独に過ごしますが、ある日彼女の元に不思議な生き物(妖精?)が表れます。その妖精についていくと、古代の遺跡が。

そこで牧羊神のパンと出会います。パンは、オフェリアが地底王国の姫君であると告げます。しかしそれを確かめるために、三つの試練に立ち向かわなくてはならないとも言います。

オフェリアはその試練に立ち向かうのですが、同時に砦へのレジスタンスの攻撃も頻繁となってきました。また、妊娠中の母親の容態もよくありません。

複雑に入り組む状況の中で、オフェリアは一つ一つ、地底王国の姫になるための試練をこなしていくのですが。。。

監督はギレルモ・デル・トロ。「パシフィックリム」や「シェイプ・オブ・ウォーター」などの傑作も撮っています。

「パンズ・ラビリンス」は現実、ファンタジーとがいり混じる構成。いや、ダークファンタジーといったほうが正しいか。ずっとファンタジーの世界に行きっぱなしでなく、現実と行き来するので現実の課題にも立ち向かわなければなりません。かなり残酷なシーンも多いので、とうてい子供にはおすすめできません。

オフェリアは姫になるための試練だけでなく、現実世界でもスペインの内乱で情勢不安な状況に立ち向かわなくてはなりません。

唯一頼れる母親の容態も思わしくない。義父たる大尉は残忍な性格。映画は最初から最後まで緊迫した空気に包まれながら、息つく間もなく展開していきます。

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「パンズ・ラビリンス」屈指の怪物ペイルマンの怖さ

私がこの「パンズ・ラビリンス」を観ようと思ったきっかけが、オフェリアの第二の試練に登場するペイルマンという怪物。

ネットでちらっと見たとき「なんだこの怪物の造形は!」と衝撃を受けました。全体的にツルっとしてるし、派手さはないのですがそのインパクトがハンパない。

パンズラビリンスとペイルマン

映画の中でペイルマンは迷宮の奥の部屋で、ご馳走の並んだ机に静かに座っています。前には目玉が置かれた皿が。上部にはペイルマンが子供を襲って食う壁画も(この時点で怖い!)。周囲には食われた子供の靴らしきものが散乱。

第二の試練において、オフェリアはその部屋のものを何も飲み食いしてはいけないと注意されますが、我慢しきれずぶどうを食べてしまいます。

すると動き出すペイルマン。皿に置かれた目玉を手にはめ込み、オフェリアに襲いかかります。

映画『パンズ・ラビリンス』 恐怖のPale Man

いやぁ、その動きの気持ち悪いこと!手のひらに目玉があるのを活かした(?)独特の動きが気持ち悪いし、怖い!ついでに言うならうめき声も怖い。

ペイルマンは顔に目がないので(鼻と口のみ)、あまり表情がないところも気味が悪いです。なおかつ、壁画から子供を食うという特性が予想できるので、オフェリアを追いかける姿が食欲のみに従って動いている感じなのも怖い。

画像でしか姿を知りませんでしたが、動くペイルマンを見て近年感じたことのない怖さと気持ち悪さを味わいました。

ペイルマンは「パンズ・ラビリンス」の中で、ちょっとの時間しか出てきませんが、強烈な印象を残しています。これはジェイソンやフレディなどと並びうる、映画史に残る怪物です。

ペイルマンの元ネタ?「手の目」

ペイルマンの造形を初めて見たとき「手の目じゃん!」って思いました。

日本にも「手の目」というペイルマンそっくりの妖怪がいます(モデル?)。

水木しげる先生も多数参考にしている江戸時代の画家で鳥山石燕という人がいるのですが、彼がその姿を書き残しています。

ペイルマンにそっくりな手の目

「手の目」の説明書きに

眼は手に一つあり、八十程の老人に、前歯を牙のようにむき出しにして追いかけられた

との記述。

造形といい、行動パターンといい、ペイルマンの原型、元ネタはこの「手の目」なんじゃないかなという気も。ギレルモ・デル・トロ監督かスタッフの誰かが、この「手の目」を見てペイルマンの造形を閃いた可能性もなくはないでしょう。

でも、もしかしたら一からあの造形を生み出した可能性も。もしくは海外にも「手の目」的な妖怪っているのでしょうか?

「パンズ・ラビリンス」の考察【現実か空想か】

「パンズ・ラビリンス」というダークファンタジーは現実なのか空想の出来事なのかいまいちわからない、不思議な映画でありました。

その中でも「あれはいったい何だったのか?」という部分を考察してみたいと思います。

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【考察1】マンドラゴラはいったい何だったのか?

マンドラゴラ・マンドラゴン・マンドレイク

パンがオフェリアに渡した、魔法の植物マンドラゴラ。それのおかげで、一旦は母親の容態がよくなったかのように見えましたが、大尉がそれを捨てた途端自体は急変。出産とともに、母親は亡くなってしまいました。

あのマンドラゴラはいったいどういう役割だったのかと疑問に思った人もいたのではないでしょうか。ただ単に、母親の容態をよくするための魔法植物というわけではないみたい。

パンのセリフに「マンドラゴラは人間になりたくともなれなかった」的なのがありました。私の考察では、あのマンドラゴラはお腹の子供にとって代わって、自分がこの世に生まれようとしていたのではないでしょうか。

肉体的なことでなくて、魂的な部分なのかもしれません。とにかく自分が人間として生まれるために、マンドラゴラは魔法の力で母親を癒し続けていたとも考えられます(ダークファンタジー的にこういう交換条件が働いていてもおかしくないでしょう)。

しかし、大尉がマンドラゴラを燃やしてしまったことで、母親にかけられていた魔法は消失。母親への癒しは消え、早産と引き換えに彼女は死んでしまいました。

一方で、マンドラゴラも魔法の途中段階で燃えてしまったので、息子にとって変わることはなかったかと思います。

マンドラゴラの声を聞いて、母親が亡くなったとも考えましたが、あの場に大尉もオフェリアもいたことから、それはないでしょう。

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【考察2】「パンズ・ラビリンス」はオフェリアの空想?現実?

「パンズ・ラビリンス」の観た中でいちばんの疑問は、あの世界の出来事が現実なのか、はたまたオフェリアの空想なのかがいまいちわからないというところ。

ラスト自らを犠牲にしたことで、最後の試練をクリアし、地底王国での姫として迎えられるシーンがあります。しかしそこで映画は終わりでなく、もう一度死にゆくオフィリアのカットへと戻ることに。

その後、ナレーションで「オフェリアは姫として幸せに暮らした」とありますが、このシーンの行ったり来たりがわかりづらい。

死にゆくオフィリアのカットがあることによって「もしかしたらこれはオフィリアの空想の話なのか?」という疑問を持った人も多いと思います。パンと彼女の会話シーンにおいても、大尉はオフィリアが一人で話しているようにしか見えておらず、その点もこういう疑問を抱かされる要因でしょう。

私の考察としては「パンズ・ラビリンス」でのファンタジー世界はオフェリアの空想ではなく、現実のものであると感じました。

それを裏付ける一番の点は、大尉が実際にマンドラゴラを手に取っているところ。そしてマンドラゴラを火にかけた瞬間、母親の体調が急変したところです。

マンドラゴラの消失と母親の体調急変は偶然とは思ません。やはり、そこに超自然的な因果関係、魔法の力があると考えられます。

そのシーンがなければ、いままでの試練などが現実ではなく、オフェリアの空想の出来事ではないかとも思えなくもありません。しかし、彼女以外の他者が、ファンタジー世界の物と接点ができるマンドラゴラのシーンこそが、あの世界が現実であるということを決定づけていると考察します。

あくまで、私なりに映画を観た中で感じたこと、思ったことなどをまとめたもので、人によって様々な考察があると思います。

「パンズ・ラビリンス」を楽しむための一考察として楽しんでいただければ幸いです。

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