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「恋文の技術」まさに森見登美彦的!阿呆の名言

「恋文の技術」阿呆の名言とラストの胸キュン! 読書録

私の好きな作家さんに森見登美彦先生がいます。

「夜は短し歩けよ乙女」や「四畳半神話体系」などが有名で、その作品は数多くアニメ化や映画化されています。

私がツイッターでフォローしている方の中にも森見さんファンの方がかなり多いですね(伊坂幸太郎さんファンと同じくらい多い)。その独特の文章にハマっている方は多いのかと。

そんな多くのファンを持つ森見登美彦さんの作品の中で、私がトップクラスに好きなのが「恋文の技術」。

最近久々に読み返したのですが、展開の面白さ、読了後の清々しさともに最高でした。

特に私が心惹かれた、名言などとともに「恋文の技術」を紹介させていただきます。

※ネタバレ含みます

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「恋文の技術」阿呆の名言とラストの胸キュン

森見登美彦作品は大きく二つに分かれると思う

私が考えるに、森見登美彦さんの小説は大きく二つに分かれていると思います。

一つは阿呆が活躍する話。もう一つは不思議な話。大きく分けてこのふた通りになるのかと(エッセイは除く)。

「夜は短し歩けよ乙女」や「四畳半神話体系」、「有頂天家族」などは阿呆が活躍する話。

「きつねのはなし」、「宵山万華鏡」、「夜行」、「熱帯」などは不思議な話に分類されます。

(熱帯についての記事:【感想】「熱帯」とは?森見登美彦の摩訶不思議な本をめぐる小説

私はどちらかといえば、阿呆が詭弁を弄しながら、のたうちまわるタイプの話が好き。

この「恋文の技術」も阿呆の大学院生守田一郎が能登半島の人里離れた研究所で、詭弁と阿呆と妄想と現実の狭間でもんどりうつタイプの小説です(「夜は短し歩けよ乙女」にハマった人は絶対に気に入る小説)。

「恋文の技術」とは

簡単なあらすじを言うと、主人公の大学院生守田一郎が、人里離れた研究所に飛ばされて、寂しさのあまり色んな人に手紙(文通)を出しまくるという内容。

あとがきにもありましたが、書簡体小説というものらしいです。出てくるのは、基本的に守田一郎の手紙のみ。

そこから、手紙をやり取りする相手と、どういう会話(文章のやり取り)を交わしているのかを想像するのが醍醐味。

手紙のやり取りの中で、守田一郎は同級生の伊吹さんに恋しているのが徐々にわかってきます。いろいろあって成り行きで、伊吹さんに恋文を書かねばならぬ羽目になるのですが、果たしてどうなるのかという、そういう物語。

愛すべき守田一郎の阿呆さ加減

森見作品には阿呆の大学生がよくでてきます。彼らは自分を過大評価しながらも、世間に怯え、詭弁を弄しながらマシマロのように柔らかい自尊心を守ろうと必死。

語る口調は昭和の文豪風というか、妙に古臭い喋り方。一見、立派そうに見えるが、中身を伴っていないところに、愛すべき阿呆さ加減がつまっています。

守田一郎も御多分に洩れず、友人を叱咤激励し、先輩に怯え、家庭教師の教え子を諭し、妹に敬意を求めるなど、手紙の内容からだけでも、どのような阿呆な存在かが垣間見えてきます。

でもね、根は純真なやつだと思うんですよ。

阿呆だけど純真。以外と友達思い。先輩からはいじられるタイプだけど、嫌われる感じではない。そんな愛すべきキャラ守田一郎。

そんな守田一郎の阿呆と伊吹さんへの純愛を、手紙と手紙の行間から読み解いていくのも「恋文の技術」の魅力であります。

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妹、守田薫の名言

リフレッシュ

「恋文の技術」には主人公の守田一郎を始め、愛すべきキャラが何人も登場します。その中で私が特にお気に入りなのが一郎の妹、守田薫。

阿呆の妹でありながら、しっかりしたところがあり、将来は宇宙飛行士を結構本気で目指している様子。物事の本質をつく、するどい眼力の持ち主。

守田一郎が書く、妹さんへの返信でしかその人物像はつかめませんが、なかなかツボにハマる名言をしたためていたようです。

その中でも一番好きな名言がこちら。

「高等遊民になりてえ」

うまく説明できないのですが、この高等遊民の一言に、森見作品のエッセンスが集約されているような気が。「働きたくない」とかじゃダメなんです。高等遊民でないと!

最初の頃こそ高等遊民になりたいとか言っていましたが、次第に妹さんはなかなかのしっかり者というのもわかってきます。なかなかいいこと言っています。

兄は私にも恋文について意見を求めてきましたけど、私は恋文なんか、いりません。なぜならば、そんな関係になることが想像もできない人から恋文をもらっても気持ちが悪いだけだし、そんな関係になることが想像できる人だったら、恋文なんていうまわりくどいことをしないで、口で言って欲しいと思うからです。
もちろん、恋人同士だったら恋文もアリだと思いますし、そういうのはステキです。逆に言えば、恋人にまともな恋文の一つも書けないような知性のない男は願い下げです。

お兄ちゃんはワガママで偏屈で、何かというと威張ったり、ふてくされてばっかりいるけれど、なぜそんなに文通してくれる人がいるのでしょうか。みんながお兄ちゃんの手紙にこたえて、手紙を書いてくれるっていうのは、とてもすごいことではありませんか。それをお兄ちゃんはすごいことだと思わないんですか?ありがたいことだと分かってるんですか?

本質はつくけれども、兄を思いやるいい妹ではないですか!

「恋文の技術」名言

その他に、私の胸を打った名言をばご紹介

おっぱいも恋心も、秘すれば花。

ちなみに、男はふだんどんなことを考えているかというと、ろくなことを考えていない。道行く男の四割は阿呆。さらに四割は役立たず。残る二割は変態である。

やむ得ぬ。これは伊吹さんの言葉です。
雨の卒業式の後、僕は伊吹さんに行ったはず。
「君は人生の荒海に乗り出すのであるな?」
「守田君は乗り出さないの?」
「乗り出すべきか、乗り出さざるべきか」
「またそんなこと言って!」とあははと笑われた。
「伊吹さんだって『乗り出したくないなあ』と思うこともあるだろ?」
僕がそんな目糞鼻糞虫的なことを呟くと、伊吹さんはべつに馬鹿にすることもなく、ニッコリ笑って言いました。「思う思う思う。でも、『やむを得ぬ!』」
あんなに楽しげに「やむを得ぬ!」という言葉が口にされるのを見て、僕はとても感心したのを覚えています。実に素晴らしい。

風船に結ばれて空に浮かぶ手紙こそ、究極の手紙だと思うようになりました。伝えなければいけない用件なんか何も書いてない。ただなんとなく、相手とつながりたがっている言葉だけが、ポツンと空に浮かんでる。この世で一番美しい手紙というのは、そういうものではなかろうかと考えたのです。

名言と言えるのか、阿呆なことから、純真さと青春っぽさが漂うものまで。こういう部分がないまぜになっているのも森見さんの魅力であり「恋文の技術」のステキなところ。

ラストは胸キュンさせる「恋文の技術」

【まとめ】寝る前読書におすすめな本10選

※以下「恋文の技術」ラストネタバレとなります!

阿呆っぽくて青臭くて、でもどこか憎めない感じで進行していく守田一郎の手紙。そして伊吹さんへの恋文は完成するのか。

いきなりですが、ボクシングに例えます。

読書開始が試合スタート。阿呆だ、阿呆だと読み進めていくうちに、読者は守田一郎を舐めきって、完全にガードを下げることでしょう。

様々な手紙の総まとめとして、伊吹さんを大文字山への集いに誘うための手紙が出てきます。

今までの阿呆な手紙で、ガードが下がりきったところで繰り出される、ラストの三行、渾身のストレート。

ついでに、守田一郎流「恋文の技術」を伝授致します。
コツは恋文を書こうとしないことです。僕の場合、わざわざ腕まくりしなくても、どうせ恋心はしのべません。
ゆめゆめうたがうことなかれ。

ここで、私の心にズキューンと甘酸っぱいストレートが決まりました。甘酸っぱい!純愛!青春胸キュン!

伊吹さんへの手紙は、どう頑張っても恋心がだだ漏れな内容でした。でも恋文の程はとっておりませんでしたし、油断しておりました。どうせ恋心を告げぬまま終わるのだろうと。

ラストに「どうせ恋心はしのべません。」とくるとは!

伊吹さんへの手紙の中での、だだ漏れ恋心ジャブが効いているので、このストレートはガツンときます!これで守田一郎の恋心が伝わらなければ伊吹さんは相当鈍い(笑)

森見登美彦作品にはこういうキュンとなる恋心を放り込んでくる作品がいくつかありますが、その中でも「恋文の技術」ほどラストがスマートに決まった作品はありません。

阿呆と純愛。そのバランスの見事さと読了後の清々しさ。森見登美彦作品ではそれほどメジャーに数えられてはいませんが、大好きな作品です。

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