本日も快眠を目指すため、寝る前読書にぴったりな本をおすすめします。
私の好きな映画の中に「かもめ食堂」というものがあります。
フィンランドで小林聡美さん演じる主人公が経営する日本食食堂「かもめ食堂」を舞台にした、ほのぼの映画。
ストーリーにアップダウンがなく、淡々と進んでいく中にも深い味のある点が好み。
主人公の小林聡美さんを軸にもたいまさこさん、片桐はいりさんという個性的なメンバーがほのぼのながらも笑いのある良質な作品です(参考:小林聡美の対談集?いいえ、ゆるい世間話の本です「散歩」)。
今日紹介するのは、かもめ食堂にも出ている片桐はいりさんの「グアテマラの弟」という本。
映画やドラマの中とはまたちがう、片桐はいりさんの魅力にあふれたゆったりエッセイです。
片桐はいりさんの気楽なエッセイ
個性派女優、片桐はいり
片桐はいりさんといえば、映画やドラマで異彩を放っている個性派女優。
やや角ばった顔とおかっぱ頭、そして長身とものすごく目立つ風采をしておりますが、映画を邪魔することなくぴりりと引き立てる名脇役としても活躍しております。
もたいまさこさんなどと並んで、私の中ではいりさんはざわつく女優さん。出てきただけで「何かが起こるぞ!!!」という妙なざわつきを覚えるのです。
だからと言って苦手かというとそうではなく、刺身につけるわさびのような、はいりさんがいると画面が引き締まる感じがするので好きな女優さんの一人でもあります。
グアテマラへ行った弟に会いに行くエッセイ
そんな片桐はいりさんの描くエッセイ「グアテマラの弟」。
内容もタイトル通り、グアテマラに住む片桐はいりさんの弟を訪ねに行った時のことをエッセイにしたものです。
この弟さんがかなりアクティブ。大学院時代にグアテマラにはまり、向こうの方と結婚してずっと暮らしているのだそう。
日本から遠く離れた地。ですが、この距離感が家族の距離を縮めもしたのだそう。
はいりさんは学生時代、弟さんとほとんど口のきかない生活だったそうです。仲が悪いというよりもお互いを意識しないという感じ。
ですが、弟さんの移住後、あまりに離れた土地で暮らす弟を気にしてか少しずつ連絡をとるようになり、今ではネット電話などで頻繁に連絡を取り合うようになったそう。
雨降って地固まるではないですが、ちょっと離れた方が気楽になって接しやすくなるってこともあるのでしょう。
片桐はいり、単身グアテマラに乗り込む
そんなグアテマラに住む弟の元に、単身はいりさんは会いに行きます。
本当はお母さんを連れて行く予定だったのですが、尻込みされてしまい、単身行きということに。グアテマラ人の奥さんを持つ弟さんの元にホームステイ。
日本の風習とまったく違うグアテマラの暮らしの中で、徐々に肩の力が抜けて、その習慣の面白さに浸っていく様を楽しい文章でエッセイにしたてています。
習慣の違いに戸惑いながらも、まぁこれもいいなぁと自分の価値観をちょこっと変えていくはいりさんの気持ちに好感が持てます。
日本では時間も仕事も社会道徳などもきちっとした中で生活しています。しかしグアテマラの地ではテレビすら時間通りに始まらない時もあるし、シエスタを何より大事にする、ごみは町中にポイ捨てなど生活風習や価値観がまるで違っています。
はいりさんがとまどいながらも、それらを大事にしていくことも幸せの点ではいいのかもしれないと気づいていく様は、普段の日本で暮らして居るとなかなか気づけない感覚でしょう。
私も、読んでいてシエスタの習慣が羨ましいとつくづく思いました。食事を終えたら何はさておきシエスタ(お昼寝)。日中のお腹も膨らみちょうどいい頃合にする昼寝は格別のものです。
それを習慣化し、なおかつ毎日の生活においてとても大切なものとして価値を置く姿勢に羨ましく、憧れを持ちます。
日本でそれを習慣化しちゃうと「あいつは怠け者だ。昼間からけしからん!」ってことになりかねないですが、あんな心地良く、たいしてまわりに害の無いものを批判される世の中もなんだかなぁと考えさせられます。
とまどいと受け入れを素直に書く
片桐はいりさんのエッセイ「グアテマラの弟」の面白いところは、はいりさんの素直な文章にあると思います。
習慣の違いに戸惑った時などは、すなおにその気持ちを文章に書いています。時にはやや失礼気味の表現になっている時もありますがそれもその素直さの魅力。
正直に戸惑ったうえで、受け入れられるところは受け入れ、楽しむ姿勢にシフトするところが素敵。
飾りっ気の無いはいりさんお素直な感想を通してエッセイに描かれるグアテマラでの生活の様子はいいとこも悪いところもひっくるめてイメージがもわもわ広がっていきます。
それに加えて、片桐はいりさんの姿を思い浮かべながら「こんな生活エンジョイしてたんだなぁ」とイメージするとより一層エッセイが楽しめました。
片桐はいりさんの気楽なエッセイは寝る前にも合う
グアテマラでのとまどいや失敗(トイレ詰まらせてひっちゃかめっちゃか)なんかもあっけらかんと書かれていて、けれども悲壮感なくさっぱりしたエッセイに仕上がっており、気楽な気分で読めます。
グアテマラっていままでコーヒーぐらいしかイメージできていませんでしたが、遠い異国の生活風景をイメージしているだけでもプチバカンス気分に。
(コーヒーに関する話もでてきます。グアテマラ現地での意外なコーヒー事情と美味しいコーヒーに渇望するはいりさんの姿が面白いです。)
優雅で華やかなイメージとは大分違いますが、それでも力強く人間味のある生活風景はエッセイからだけでも力づけられます。
ふだん真面目な習慣や生活スタイルでややおつがれ気味な場合でも、グアテマラの生活習慣を見て「こんな感じの暮らしも有りなんだ。」って自分の引き出しに入れとくのと入れとかないのだけでも大分違うと思います。
自分の中に、気楽と素直さの引き出しを増やし、肩の力が抜けるエッセイ。寝る前読書の一冊におすすめです。
関連記事:女優小林聡美の普通女子旅なハワイエッセイ「アロハ魂」