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「完全版社会人大学人見知り学部卒業見込」オードリー若林のエッセイ

よく寝る本

本日も寝る前の読書におすすめの本を紹介いたします。

私、昔からお笑いが大好き。

近年では主に落語が一番好きですが、海外のコメディや漫才ももちろん好きです。

日本の漫才師さん、色々と特色を持った方が多い中で一風風変わりな雰囲気を持つ人が。それはオードリーの若林さん。

私の印象では、クセの強さがアドバンテージの芸人界において、ある意味最もクセのない、普通さを武器に持つ若林さん。

相方春日さんのインパクトが強いせいもあるかもしれませんが、それを差し置いても普通な印象。

ここでいう普通とは何か。それは「どこにでもいそうな人」というイメージを具現化したような感じ。

もちろん、芸人さんとしてトークなども独特のものがあり面白いのですが(オードリーのオールナイトニッポンなんて最高です!)、私にとって若林さんは上記のような印象のある芸人さんです。

そんな若林さんのエッセイ「完全版社会人大学人見知り学部卒業見込」。

これがなかなか、ある特定の青春時代を送ったものにとってはピリピリ染みるものがある傑作。

売れてない芸人時代から急に売れるようになり、社会との接点が増え戸惑う、若林という一人の男の成長期です。

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【感想】オードリー若林のエッセイ「完全版社会人大学人見知り学部卒業見込」

さっぱりした感じが魅力のオードリー若林

オードリー若林さんの魅力は何か。私的にはなんだかさっぱりしているところが魅力。

刺身のツマのような。様々なクセや特徴のある人々ひしめく番組内において、ちょっとした清涼感。いると安心感がますような。

刺身のつまと言っても、元は大根。それ単体でも様々な料理としてメインを張れるだけの実力もあります。だけど基本的にさっぱりな口当たり。私にとってのオードリー若林さんは刺身のツマのようにさっぱりとして料理のメインではないんだけれど、いないと困る芸人さん。

しかし、エッセイを読むと、その内実にグニョグニョと暗く、葛藤もかなりあったよう。

社会にハマれない葛藤、悩み、凝り固まり

ビジネス

このエッセイ「完全版社会人大学人見知り学部卒業見込」では若林さんが売れ始めた30前後からのはなしです。

それまでの間は売れない芸人暮らし。先輩のいじりに腹を立て、目上を立てることができず、社会のシステムに疑問を抱き、やることなすことがんじがらめなつらい青春時代が垣間見えます。

そんな中M-1グランプリ準優勝を勝ち取り、オードリーが日の目をみることに。テレビで見ていた通り、様々な番組で独特の存在感を放ち、一躍売れっ子になりました。

売れっ子になるということは、当然様々な人や組織、いうなれば社会と関わる機会が増えるということ。

相当こじらせた感じの20代を過ごしてきた若林さんにとっては、面白いんだけれども息苦しいことだらけなのが「完全版 社会人大学人見知り学部卒業見込」から伝わってきます。

苦しいし、わかんないし、腹の立つことも多々あるけれども、なんとか芸能界の荒波で揉まれていく中で、凝り固まっていたものもいい感じに揉みほぐされていく様がエッセイから垣間見えます。

本書のタイトル同様、社会人大学人見知り学部に在籍していた若林さんが卒業していくまでの軌跡を描いた成長期でもあります。

自意識過剰という自虐プレイ

よく出てくるものに「若林のクセにと思われりゃしないか」的なのがあります。

スタバでサイズを選ぶ時、グランデというのが気恥ずかしい。お昼ご飯に何食べたと聞かれ、本当はパスタを食べたんだけど「パスタ」という小洒落たワードをいうのもなんだか気恥ずかしい。

別に誰も気にしないのに、本書の中ではやたらと自意識過剰な感じが見受けられます。

自意識過剰が原因で、いらぬことに気を使ったり悩んだりと。

自意識過剰ってある意味自虐プレイみたいですね。おそらく無意識的なんでしょうが自意識過剰から「俺なんて」っていう自虐が生まれ出る感じ。このプロセスは完全にこじらせている感じがあります。

モラトリアム若林

悩む

「完全版 社会人大学人見知り学部卒業見込」の冒頭で長いモラトリアム期を過ごしたとありました。

よくモラトリアムって聞くし、なんとなくはわかるんだけれども具体的にはどういうことなのか。調べてみると「学生など社会に出て一人前の人間となるのを猶予されている状態を指す」とあります。

若林さんも学校を出て、30前後で売れるまでの間、なんとか細々バイトで食いつなぎながら芸人をしていました。

もちろんその期間も社会で過ごしてはいるんだけれども、なかなか一人前とは見られない時期。

そのモラトリアム期と自意識過剰とがこんがらがって、ひねくれ凝り固まりが熟成されていったようです。

若林さんは、売れてから色々と凝り固まっていたものは疲れることがわかり、部分的に手放していきます。

案外手放してみると楽だし楽しいし、そうすると余計社会にハマっていくという相乗効果で無事脱モラトリアムを果たした模様。

「完全版 社会人大学人見知り学部卒業見込」のモラトリアム

「完全版 社会人大学人見知り学部卒業見込」はモラトリアムや自意識過剰で悩む青春時代をつづったエッセイだけれども、そこは芸人。全体的に文章は面白いし、落とすところは落としてます。今現状で活躍もされていますし、なんとかなって良かったねって気楽さで読めました。

一方で、自分の二十代前中半も若林さんと似たような感じで苦しんでいた時期があるのでピリピリと身に染みてくる部分も。

大学を出たけれど、就職にイマイチしっくりせず辞めてバイトとかした日々。「社会とはなんぞや?」とか「自分はこの先どうなるのだろうか」など悶々としていた過去があります。まさにモラトリアム時期。

現在三十半ば。フリーランスでデザイナーをやっており、今は毎日楽しいですし幸せをひしひし感じております。

自営でやっていく中でいろいろ困ったことも多かったし、わからないことも多かったですがやってりゃなんとかなるなというのはわかってきました。

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20代前中半は社会というものはものすごく難しく、固く、攻略しがたい鉄壁要塞みたいなことを思った時もありました。しかし実際社会で色々やっていると甘くはないがそこまで厳しくもないという印象。

働く中でいろいろな人と知り合い、中には何を商売にしているのかよくわからないけれどもなんだか幸せに生きているおっちゃんとかにも出会えて、まぁなんとかなるという確信や安心的なものも得ていきました。

「完全版 社会人大学人見知り学部卒業見込」の中での若林さんの成長や気づきを読むたびに「わかるわかる!」と小膝を打ちたいぐらいに身に染みわたったのです。

20〜30代ぐらいになんか社会のこととかで色々悩んだりしている人に是非読んでもらいたいし、それを乗り越えた人にも読んでもらいたいエッセイです。

エッセイで言及される若林さんと彼女

カップル

以前アメトーークで「女の子苦手芸人」というのをやっていました。

その中でオードリー若林さんとバカリズムさんのお二人は重度の女の子苦手っぷり。番組内では冷や汗モノだったみたい。

もちろんバラエティーですし、ある程度ポーズの部分もあるのでしょうが(バカリズムさんのラジオとかみると結構女の子好きっぽい)エッセイを見る限りでは若林さんの苦手っぷりは結構ガチっぽい。

過去に彼女がいなかったわけではないのですが、エッセイ中はずっと彼女ができていません。どうも女性に対してのこだわりや不信感みたいなものがあるよう。

どう話しかけていいのかわからないし、何をすればいいのかも。それでもエッセイ後半ではだいぶ慣れた感じはでてましたが。

昨日昼間にテレビを見ていたら「上沼・高田のクギズケ!」で若林さんの破局ニュースが出ていました。お相手は女優の南沢奈央さん。可愛いし歳は一回りも下。

エッセイを読んだ直後だったので、破局でかわいそうというよりも再び彼女が出来て良かったなぁという印象が強かったです。

過去に振られた時には世界が崩壊したかと思ったそうです

「完全版 社会人大学人見知り学部卒業見込」の中で、過去に彼女に振られた時のとりみだしっぷりが描かれています。

振られた途端、過呼吸に。世界が崩壊したかと思ったが、翌日にも無事世界が存在して、逆に驚いたそう(なんじゃそら)。4日間氷しか喉を通らなかったということから、その落胆っぷりが伺えます。

この辺に見え隠れする強烈な自意識も、芸人さんの面白さとしてはポテンシャルでしょう。

少なくとも今回報道されたの失恋ではそのようなことはなさそう。これも成長ですね。

現代の四畳半エッセイ。近くで見ると悲劇だけれど、遠くから見ると喜劇に他ならない。

落語を聴いて爆笑する女性

「完全版 社会人大学人見知り学部卒業見込」を読んでいて、なんとなく四畳半というワードが浮かびました。貧乏暮らし、野望はでかい、でも何も身についていないし成し遂げていない、そんなモラトリアム期。昭和の本とか読んでいるとそんな描写を時々見ます(主に松本零士御大)。

ガッツの点では大分とおとなしめですが、それでも若林さんのエッセイにはそんな四畳半風味も感じられました。

たぶん、どっぷり若林さんの目線でこのエッセイを読めば悲劇的なんでしょうが、ある程度引きで読めれば面白がれるでしょう。

チャップリンの名言に「人生は近くで見ると悲劇だが、遠くから見れば喜劇である。」という名言がありますが「完全版 社会人大学人見知り学部卒業見込」はまさにそれだなと思います。

実際に本人は悩んだりしているのですが、実際遠目から見ると悩むほどのことでは全然なく笑い飛ばせるようなもんだったりもするもんです。

悩める人も、そうでない人も

現在進行形で悩んでいる人はなにかしらのヒントに。「嗚呼こうやって悩んでいた若林さんもなんとか乗り越えていったんだな」という希望と支えにも。

とっくにその時期は乗り越えた、もしくは経験すらしていないという人には「凝り固まってやがんなぁ、アハハ」と気楽に笑いをもって読めると思います。

私なども昔の自分に重ねて気恥ずかしくなりながらも、寝る前の読書時間に気楽な気持ちで読み進められました。

「完全版 社会人大学人見知り学部卒業見込」で描かれる青春と社会に七転八倒するオードリー若林さんの姿を楽しんでみてはいかがでしょうか。

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