本日も快眠を目指すため、寝る前読書にぴったりな本をおすすめします。
今日も旅エッセイの紹介です。
旅、特に海外旅行を思い浮かべた時に真っ先に思い浮かぶのはどこか。
そう!たいていの人は「ハワイ」を思い浮かべると思います(人それぞれですが笑)。
私はハワイに行ったことがありませんが、行ったことのある人は「思った以上に良かった」と聞きます。
海外でハワイって、戦後からずっと続くベタ中のベタな感じですが、それでも常夏の楽園、のんびりした大自然など魅力的なスポットであることは変わらないみたい。
そんなハワイを旅行した女優の小林聡美さん旅エッセイ「アロハ魂」です。
小林聡美のおすすめ旅エッセイ「アロハ魂」
独特な女優、小林聡美
私にとって小林聡美さんといえば「かもめ食堂」のイメージが一番強いです(年代によっては「やっぱり猫が好き」、あるいは超熟のCMを思い浮かべたりと様々でしょう)。
フィンランドで食堂を経営する日本人女性を、いい感じの雰囲気で演じていました。
脇を固めるもたいまさこさん、片桐はいりさんという癖の強い女優さんたちも、小林聡美さんのワンクッションでいい感じのスパイスの効いた取り合わせに(片桐はいりさんのエッセイも寝る前読書におすすめです)。
私にとって小林聡美さんの魅力は不思議な普通ぽさにあります。個性的ではあるんだけれど、どこにでもいそうな空気を漂わせた女優さん。
存在感のある普通とでもいいましょうか。主役を十分張れるのに主張はしすぎない、かといって地味でもない独特の塩梅。
小林聡美さんは女優業の他にたくさんのエッセイも出されており、これもそのうちの一つです。
ハワイを旅行する女性たち
「アロハ魂」では小林聡美さんとお友達がツアーガイドとともにハワイを旅行した時のことをエッセイにしたもの。
ハワイらしい、様々な観光名所を回ったり、美味しいものや名物を食べたり、乗馬体験をしたりとごくごく想像しうる限りのハワイ旅の楽しみが描かれています。
「アロハ魂」を読んでいて思ったのは、特に小林聡美の女優っぽさを感じないということ。
このエッセイを読んでいると、ごくごく一般的な、歳のにかよった女性グループのテンションのあがるハワイ旅といったイメージがずっと続きます。
逆にそれが気楽で面白かったです。変に個性的な視点や描写とかでなく「友達とハワイを旅行するってこんな感じなんだろうなぁ。」というリアルさが素敵に伝わってくる文章。
食べ物に一喜一憂したり、観光地であーだこーだ言いつつ結局楽しんだりとハワイ旅行ってこうなんだろうなってテンプレート通りのことが進んでいくのが面白い。
普通なんだけれど、やっぱりところどころで「あっ、これは小林聡美がハワイを旅しているのだ」という、ある種独特の雰囲気があります。
やっぱり食べ物が好き+カバ汁
この旅エッセイの中で一番面白かったのはハワイの食べ物のが出てくるところですね。
パンケーキだったり、ロール寿司(ソフトシェルの蟹巻き)、大福のようなお饅頭だったりとハワイらしさがないようであるようなものたち。
日系移民の人の影響なども強いのでしょうか。馴染みはありつつも、そこはしっかりハワイ風味。
小林聡美さん率いる女性陣がわいのわいのと食べる姿は見ていて和みます。
一個だけ全然知らない飲み物で「カバ汁」というものが。お酒じゃないんだけれど、飲むと口がしびれてヘロヘロする(?)という謎のジュース。
カバ汁の部分の描写が
非常にはっきりしない味である。
「ん?んんん?」
なんだか、口の中がしびれてきた。(中略)
山椒や胡椒の香りこそしないが、刺激的にはそんな感じだ。でも、甘くもないし、風味もないし、これをヤシの実一杯飲むのは至難の業である。
どのくらい飲むのがクミコさんの言う飲みすぎなのかわからないが、病みつきになる心配はなさそうである。
との感想。非常に的を得ない飲み物のようです。
調べてみるとカバ(カヴァ)はコショウ科の潅木とのこと。根の部分を乾燥させて水に溶かしたような飲み物だとか。
アルコールは含まれていないが、飲むと酩酊に近い感覚を覚える、ただし肝機能障害の恐れありという危うい飲み物。
フィジーの方ではカバ汁を飲み続ける儀式というのもあるみたい。なんにしても日本では味わえない、貴重な南国味であったみたいです。
ハワイの景色、時間で感じる「アロハ魂」
風景描写で印象的なのは大農園と火山の部分。
どこまでもひたすら続く大農園はアメリカ、ハワイって感じがあふれています。
それと火山も多いみたいで、火山ツアーの話題も。実際に火山というものを見たことがないので、地球の生み出すエナジーが感じられる景色というものを実際見てみたいものです。
ハワイというところは自然と観光とをうまいことミックスさせて、その集客を図っている面も。
小林聡美さんが滞在するホテルなんかも溶岩の上にホテルがあり、大自然に人工物をむりくり建てる部分には賛否があるでしょう。
ハワイ最終日
朝ごはん後、海亀くんに挨拶に行ったら、いつものように固まって寝ていた。また次会うときまで元気でね。と、言ったって、順当にいけば、海亀くんのほうが相当長生きなのだが。こんな溶岩の上にこんな人工的なホテルなんか建てて、環境破壊だ!という見方もあるけれど、そんな砂浜で幸せそうに甲羅干しをしている海亀くんを早死にさせないよう、我々もできるだけのことをやってくらしたい、と慎ましやかに思うのであった。
と小林聡美さんは思います。
観光地化され、人工物が建ったおかげで私たちはハワイの雄大な大自然に近づくことができるのかもしれません。そして、だからこそ自然のありがたさを再確認できる地でありうる可能性があります。
小林聡美さんのようにハワイの地で楽しみながらも、地球環境に関して何かをしみじみ思う体験も大切なのでしょう。そういう役割もハワイにはあるのです。
小林聡美の旅エッセイで頭の中プチトリップ
毎度言っとりますが、旅エッセイは頭の中でその旅行気分を味わい、のんびり気楽な感覚を楽しめます。ですので寝る前の読書に旅エッセイをおすすめしています。
一日の心身の疲れが残して寝るのではなく、せめてこういう気楽な旅エッセイを寝る前に読むと気分だけでもほぐれるかもしれません。
特に「アロハ魂」では旅の部分、リゾートの部分、大自然の部分、料理の部分と気楽になれる要素が満載の旅エッセイ。
普通なんだけど個性的な小林聡美さんの文章とともに、ハワイの魅力を楽しんでみてください。
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