眠るということ。それは人の三大欲求を満たす行為の一つ。
三大欲求を満たすというからには眠れて当たり前のような気もしますが、時には眠れないことも。
1回や2回ならばさして気にはなりませんが、それが数日以上続くとかなり気になる事態と言えます。
大昔、生活のサイクルが自然に沿っていた時代ならば、夜になると自然と眠たくなっていたのでしょうが、現代のように夜も明々としていて、スマホやパソコン、テレビなど強烈な明かりと刺激を発するデバイスなどによって不眠気味となるのもいなめません。
こんな時代だからこそ、「寝る」という行為においても何かしらテクニックを学んでおいたほうがいいように思います。
それも、民間療法などでなく、なるべ科学的実験や検証がなされたうえで、効果のあるものを。
今回紹介する本は、世界的に有名なスタンフォード大学の研究による「スタンフォード式最高の睡眠」。
世界的な睡眠の研究機関と権威による、科学的に正しい睡眠までのプロセスやテクニックがつまっています。
「スタンフォード式最高の睡眠」研究に基づく、寝るための方法本
睡眠研究の総本山スタンフォード大学
本書の著者はスタンフォード大学医学部精神科教授であり、SCNラボ所長の西野精治さん。
スタンフォード大学といえば、言わずと知れた世界的に権威のあるアメリカの大学です。
プロローグによれば、スタンフォード大学は世界に先駆けて睡眠を研究分野として開拓したところでもあるよう。著者の西野さんも睡眠研究の総本山はスタンフォード大学であると言い切っています。
また、世界で活躍する睡眠研究者のほとんどが何らかの形でスタンフォードに籍をおいた経験があるのだとか。
これだけの睡眠研究の実績が積み重なっているからこそ、「スタンフォード式最高の睡眠」に書かれていることもかなり信用性があります。
(それにしても、ちょっと前に流行った「スタンフォードのストレスを力に変える教科書」をはじめとした「スタンフォード式」とか「ハーバード式」とか「東大式」など有名大学を冠する書籍が多いですね。それだけ信用性を求めているのでしょう。)
睡眠負債が溜まりがちな日本人には眠れない人も多い?
本書にも書かれていますが、日本人は世界的に見て睡眠時間が少ないみたいです(西野先生は「睡眠偏差値」が低いと評されていますが、まさにそう)。
少なくてもそれが体に合っていれば大丈夫なのでしょうが、もし足りていないと次第と睡眠負債というものが溜まってきて、それが様々な心身の不調や病気へと発展していく恐れも。
睡眠負債は週末の寝溜めなどですぐに取り返せる類のものでもなく、やはり長期的に毎日の睡眠サイクル、生活リズムで解決していくより手がなさそうです。
また短時間睡眠の人ほど短命の傾向にあるともあったので、たかが眠りと甘く見ることができません。
また、近年睡眠障害の人も増えているといいます。
夜になっても眠れない、寝付けない。夜になっても明るい光の浴びすぎ、スマホなどのデバイスで脳を覚醒させすぎ、ストレスなど要因は多々考えられますが、眠るという行為一つをとっても悩んでいる人は増えているようです。
寝不足な日本人。眠れない日本人。そんな人にこそ、一度眠るということ、寝るための方法というものを知識として得ておくべきかもしれません。
人生の3分の1の眠りが、のこり3分の2の生活を支える
そもそも睡眠は脳や体を休め、リカバーしてくれるためのもの。
その睡眠を疎かにするということは、結果的に日中のパフォーマンスを疎かにしているということも書かれていました。
たしかに、寝ないで仕事する、徹夜で仕事したと自慢する人も中にはいますが、そういう人はまったく寝ないで平気という特異な人間でない限り、確実にトータルで見たパフォーマンスを下げた仕事をすることになるでしょう。
起きている時間、充実してやりがいのある人生を送りたいと思うのならば寝る時間をしっかりととらなければならいとつくづく思います。
睡眠に大切な「黄金の90分」
「スタンフォード式最高の睡眠」でもっとも大切だと思えたのが「黄金の90分」という考え方。
眠り始めの90分(最初のノンレム睡眠)がもっとも大切で、ここをしっかりと眠れるか否かによって睡眠の質が大いに変わってくるのだとか。
多少睡眠時間が短くなったとしても、この「黄金の90分」さえしっかり眠れていれば睡眠のクオリティー的にはまずまずのよう。
まずは睡眠の質を高めることが大事
逆に言えば、寝る時間がないならば、この最初の90分の質を下げてはいけないということです。
逆にある程度長く寝ることができても、この最初の時間を疎かにしてしまうと、トータルの睡眠の質は下がるのだとか。
この「黄金の90分」もできるなら深夜12時前後が理想。夜更かしして、朝方に寝付いても、体が起床モードにはいっているので、質の高い睡眠は望みづらいみたいです。
ではこの「黄金の90分」の眠りを得るために効果的な方法はあるのでしょうか。
入眠90分前の入浴。深部体温を上げて、下げて、縮めて眠くなる
「黄金の90分」である、最初の眠りの質を上げるために「スタンフォード式最高の睡眠」で推奨されていたのが、入眠90分前の入浴でした。
深部体温が下がると眠くなるというのは聞いたことがありましたが、本書ではそれの詳しい説明がありました。
深部体温を下げるというよりもむしろ皮膚温度と深部体温の差を縮めることが重要のようです。覚醒時の深部体温は皮膚温度より2度ほど高いようですが、睡眠時は深部体温が0.3度ほど下がるとのこと。その結果差は2度以下に縮まります。
この皮膚温度と深部体温の差が縮まった時に入眠しやすいという研究データがでているみたいです。
そこで重要となってくるのが入浴。
入眠90分前に入浴することで、深部体温がほんのわずかに上昇するそうです。深部体温は上がった分だけ大きく下がろうとする性質があり、入浴によって意図的に深部体温を上げておけば、大きく下がってより熟睡が期待出来るのだそう。つまり、入眠最初の90分の質が高まる可能性が高いということです。
上がった深部体温が元の温度に戻るまでの時間が90分なので、入浴もそれを見越して済ましておいたほうがよいとのことです。
ノンレム、レム睡眠は90分周期ではない。そのためのアラームテクニック
よく言われていることで、私もそう思っていましたが、ぐっすりな状態のノンレム睡眠と浅い眠りの状態のレム睡眠は90分周期だと言われています。しかし、実際にはそんなに厳密ではないそうで、人によってもばらつきがあるそう。
よく目覚ましアラームを設定する時にそれを見越して90分倍数にすることがありますが、人によっては深く眠っているノンレム睡眠の時に目覚ましがなってしまい、快適な覚醒に繋がらない可能性もあるとのこと。
理想は浅い眠りのレム睡眠時に、すっきりと覚醒したいもの。
そこで「スタンフォード式最高の睡眠」でお勧めしていたのがアラームを2つの時間で設定するというもの。
たとえば7時には起きたいとすれば6時40分と7時の20分間隔で二つアラームをセットせよとのことです。
最初のアラームはごく微音で短くセット。この時にレム睡眠ならば小さな音でも目覚められるでしょうし、ノンレム睡眠時でしたらそのまま寝続けるはず。2回目のアラームは通常の音量と間隔でいいでしょう。
こうすることで、レム睡眠時に起きられる確率がだいたい1.5倍ほど高まるのだそうです。
睡眠を知ることで、眠りに対処できる
上記に記したのは「スタンフォード式最高の睡眠」のほんの一部ですが、私の中でかなり有効的だと思えた部分です。
なんとなく世間一般で言われていたり、ネットで学んだだけの情報でなく、世界の権威あるスタンフォード大学の研究結果ということもあり、実践する価値はかなり高いでしょう。
「スタンフォード式最高の睡眠」には「黄金の90分」や「入眠90分前入浴」、「アラームのダブルセット」以外にも役にたつ知識や睡眠のためのテクニック、覚醒のためのテクニックがたくさん掲載されています。
たかが睡眠と侮るなかれ。睡眠を疎かにすることは自分の人生を疎かにするということ。
本書を読んだことで自分のライフスタイルにおける睡眠のためのプロセスをもう一度見直す、いい機会になりました。
特にビジネスパーソンの皆様など、普段からのパフォーマンスを向上したいと思われている方も多いと思います。
一度、自分のライフスタイルと照らし合わせ、どれぐらい質の高い睡眠が取れているのか、睡眠負債が溜まっていないかなど再確認してみてはいかがでしょうか。
特に日中の生活で、頭がぼーっとしたり、眠たい時間が続いた時など、その解決のヒントが「スタンフォード式最高の睡眠」から見つかるかもしれません。
【睡眠に関してこちらの記事もどうぞ】
>>生産的な1日を送るために「睡眠の10-3-2-1ルール」