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「サンダー・キャッツの発酵教室」発酵に興味のある人の入門書!

読書録

発酵食品というものに興味を覚えたのはいつ頃か。

最初は漫画「もやしもん」にハマったあたりだと思います。酵母や菌などを擬人化した漫画もやしもん。発酵などの世界をわかりやすく、面白い形で広めてくれた非常に素晴らしい作品。

自然界、いやもっと身近な目の前の空気中にもそういう無数の酵母や菌が浮遊しているっていうのも、考えてみると面白いですよね。目には見えないんだけど、栄養源を放置しておくと発酵か腐敗の形で目に見える形で現れてくる。

科学では解明されてるんだろうけど、どこか魔法的な魅力もある発酵の世界。

その発酵の魅力をアメリカ人が綴った本「サンダー・キャッツの発酵教室」のご紹介。

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「サンダー・キャッツの発酵教室」発酵愛に満ち満ちた、写真も豊富な本

「サンダー・キャッツの発酵教室」とは

「サンダー・キャッツの発酵教室」の著者はアメリカ人のサンダー・エリックス・キャッツさん。本書の冒頭には発酵リバイバリストとあります。リバイバリスト?

ニューヨークタイムズ紙から「アメリカの食シーンにおける、奇想天外なロックスターのひとり」とも呼ばれる人みたいです。

発酵好きが高じ、それに関する著書を多数出版。この「サンダー・キャッツの発酵教室」に関しては、もともと本というよりもZINE(個人趣味で作る雑誌)の体裁で作られたもののよう。

それもあってか、堅苦しさがなく、文章から写真にいたるまでのびのびとした発酵愛に満ちた作品に仕上がっています。

メインは、古今東西の様々な発酵食品の作り方についての解説。そしてサンダー・キャッツさんの発酵の魅力についての熱い思い。素敵な写真とともにそれらが紹介されており、ぱらぱら眺めるだけでも紹介されている発酵食品を作りたくなる気分にさせてくれる本です。

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発酵は厳密でなくてもいい。ザワークラウトを例に

【極上の保存食】ザワークラウトを作ろう!|Let's Make Sauerkraut – Superb Preserved Food

発酵食品の作り方で、まず最初に出てくるのがザワークラウト。ザワークラウトとはドイツ発祥のキャベツのすっぱいお漬物。実は私、なんどかザワークラウト作りにチャレンジしているのですが、成功した試しがない。

あまり酸っぱくならなかったり、変な匂いがしたりで廃棄することが多く、そもそもこれが成功なのか失敗なのかわからず悶々としていました。

「サンダー・キャッツの発酵教室」を読んで目からウロコだったのが、サンダー・キャッツさんが消毒や塩の分量などにあまり神経質になっていないこと。ザワークラウト作りにおいても、一度も塩の分量を厳密に測ったことはないと書かれています。

ネットなどをみると、「ザワークラウト作りにおいて、道具はしっかりと殺菌、塩の分量は厳密に!」的な記事が多かったので、発酵のスペシャリストであるサンダー・キャッツさんの姿勢が意外とゆるいものだと知れただけでももうけものです。

キャベツ

むろん、成功率を上げるために熱湯での消毒などして腐敗要素を取り除くことは重要だと思います。しかし、あまり神経質にならなくともよい、発酵は自然のリズムに任せよう的なゆるやかな空気が文章から感じられて、もう一度ザワークラウトに挑戦してみようという気にさせてくれました。

よくよく考えてみると、衛生観念の薄い大昔からこれらの発酵食品は作られてきており、その大半が成功し続けてきたはず。とすれば、あまり殺菌(菌の力を利用しようとしているのに変な言葉ですが)に神経使わなくてもいいんだなと。

本書でも

もし、カビ状のものが浮いていたら、取り去ってしまおう

とのこと。カビが生えた、即全廃棄でなくても大丈夫なんだなと、発酵に関してはこういうおおらかな心構えが成功の秘訣なのかなとも(もちろん食中毒のリスクはあり、どこまで食べるかは自己責任がつきまといますが)。

サンダー・キャッツと日本の発酵食品「すんき」

「サンダー・キャッツの発酵教室」のではザワークラウトをはじめ、味噌、甘酒、蜂蜜酒、天然発酵パン、テンペ、ヨーグルトなど様々な発酵食品の作り方が紹介されています(ちなみに甘酒は以前作ったことがあり、成功しました。自分で作った甘酒の旨いこと!【自家製甘酒】麹とお米の発酵で作る美味しい甘酒の作り方!)。

作り方だけではなく、サンダー・キャッツさんが長年の経験で得てきた心構えやポイントなども多く載っています。そういう部分に発酵食品を作る上での心構えや哲学的なものが凝縮されているのかと。

ただのレシピ本ではない、発酵哲学がこれらの文章には込められています。

そして日本版の「サンダー・キャッツの発酵教室」には巻末にサンダー・キャッツさんが日本を訪れ、木曽地方に昔から伝わるすんき作りを体験する記事が載っています。

すんき。赤カブの葉っぱでつくられる無塩のおつけもの。通常、漬物といえば塩が肝心要のような気がしますが、すんきにおいては赤カブの葉っぱにいる常在菌などの力だけでお漬物になるよう。すんきの作り方は以下のYouTubeでもやしもんにでてくる菌たちとともに詳しく紹介されています。

信州木曽町 すんきのまち

ものすごくすっぱいそうですが、いいかえれば植物乳酸菌が豊富ということでしょうか。

すんきという名称を聞いたサンダー・キャッツさんが「チベットやネパールにも赤いラディッシュの漬物でSinki(シンキ)というのがある」と教えてくれますが、偶然のつながりとはいえ、ロマンを感じたり。

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発酵を知ると世界に興味がでてくる

世界中に発酵食品があり、もちろん日本にも味噌や醤油をはじめ多くのものがあります。そんな中でもまだまだ知らないものがある。赤カブ漬けは知っていてもすんきまでは知りませんでした。

私の住んでいる地方は温暖ですし、まして海沿いなのですんきのような漬物は誕生しなかったでしょう。しかし、木曽においては塩が手に入りづらい、寒冷、冬には野菜が手に入らないといった条件があわさってすんきが生まれたんだと思います。

考えてみると発酵は、その国々、土地の風土や気候、文化と密接に関わっており、それを通して先人の知恵が見えて来るのかと。

おそらく最初は、保存目的が第一だったのでしょう。それが美味しさの追求にかわり、また気持ち良くなるためのお酒作りなどへと発展。

寒冷な地では保存食としての発酵が、温暖な地では腐敗を防ぐための発酵が。魚醤が生まれた地もあれば、鮒鮨のような形で発酵が進化した土地もある。ザワークラウトだって、きっとドイツでキャベツがたくさん取れたからこそ、寒い冬に備えて作られだしたのでしょう。

今の世の中のように、スーパーやお店でなんでもパッケージングされて食べられる世の中ではあまり意識しないことかもしれませんが、発酵食品に少しでも興味をもつと食と文化に対する意識がちょっとだけ変わるかもしれません。

「サンダー・キャッツの発酵教室」は文章と写真のバランスもよく、非常に読み易い本だったので、発酵に関しての入門書にぴったりな本であるとも感じました。

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