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【恐怖】究極の短編ホラー!「一行怪談」

読書する女性よく寝る本

本日も快眠を目指すため、寝る前読書にぴったりな本をおすすめします。

先日、ホラー作家の三津田信三さん編の短編ホラー集「怪異十三」を紹介しました。

寝るということに焦点を当てると寝る前の読書にホラーはあんまり適さないのかもしれません。しかし寝る前の布団に入った時間帯というのはまことにホラーを楽しむのに適しています。

薄暗い中読書灯をつけ、シーンと静か中でホラーの世界を楽しむ。日中日向で読むホラー小説よりもよっぽどその恐怖が味わえます。

特に短編ホラーなんかだと、キリのいいところで区切りやすいので眠る前にもちょうどいい。

今日おすすめするのは、これこそ短編ホラー集の決定版といっていい「一行怪談」という本。

ものすごく短い文字数の中に、読み手のイマジネーションをぞわぞわさせる恐怖が濃縮されています。

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数行の短編に広がる恐怖「一行怪談」

「一行怪談」の定義とは

作者は吉田悠軌さんという方。怪談の収集や語り、オカルト全般を研究されている方のようです。

さて、「一行怪談」とは何か。本書の冒頭に、その定義がのっています。

・題名は入らない。
・文章に句点は一つ。
・詩ではなく物語である。
・物語の中でも怪談に近い。
・以上を踏まえたひと続きの文章。

とあります。

文章に句点が一つということと、あくまで物語を感じさせるものというのがその大きな特徴ですね。

一つ一つの作品も短くて、長くてもツイッターでつぶやける程度(100文字前後)の文字数。これは究極の短編ホラーといえるでしょう。

ものすごくミニマムですが、それぞれに創意工夫のこらされた恐怖の世界と展開が待っています。

短編作品の面白さ

私はもともと星新一さんが描くようなショートショートや短編が大好き。

もちろん、長い小説なども面白くて好きなのですが、短編は短い文章の中に一つの物語が完結しており、それがめくるめく現れるのが魅力です。

限られたページ数や文字数の中で、いかに無駄を省き、言葉を選び伝えたいことを表現するか。

俳句や華道などにも通じますが、削ぎ落とされた美意識といいますか、ミニマムな中で世界を作り上げるところが好きなのです。

そんな私の好みに見事にフィットしている「一行怪談」。一つの作品を読むのに30秒とかかりません。下手したら10秒で読めるような作品も。

そんなに短いのに、しっかりと恐怖が広がる世界が構築されているのです。

逆に、短いからこそ、その話の前後関係や続きを読み手が想像力をむくむくと広げるざるを得ない感じもあり、今までにないタイプのホラー作品となっています。

おすすめの「一行怪談」

「一行怪談」の中でも秀逸と思われるものをいくつかご紹介。

夕暮れの街のそこここのスピーカーから、狂った女の笑い声が少しづつずれながら聞こえてきた。

夕方にあの坂に近づかない方がいいのは、いつも午後5時のサイレンとともに、汗だくのオバさんが自転車のペダルを必死にこぎながら、急坂をゆっくり下っていくのに出くわすからだ。

ずっと昔にご先祖様が扉ごと塗り込めた開かずの間から叫び声が聞こえたんで壁を壊してみると中で裸の赤ん坊が泣き喚いていて、それがお前だったんだよ、と母に打ち明けられた。

子供の時に忍び込んだ廃屋の地下室で、無人のままカタカタと映写されていた16ミリフィルムの、あの映像を忘れられるなら、大事な人や幸福な思い出も含めた全ての記憶を失ってもいい、と彼は思っている。

実家の薄暗い廊下の向こう、奇妙な高さから首だけ覗かせた両親が「おかえりなさい」と笑いかけてくるのだが、こちらが何と言おうと玄関口まで来てくれない。

誕生日のたび、鉈と花束を持った女が現れ、窓の外から祝いの言葉を叫ぶのだが、花の数は毎年一本ずつ減っていて、今年はついてに鉈だけを手にした女が来ることになる。

とうとう村人全てが狐憑きになってしまったため、誰も狐憑きとは何なのか分からなくなり、もはや狐憑きですらなくなった皆が呆然と暮らす村に、ある日、旅人が訪れた。

最後の三つはその後にどうなってしまうのかということを想像させる恐ろしさがあります。

特に怖いのが「子供の時に〜」の話。短いながらもうまいと思わせる作品。彼はいったいどれほどのおぞましいものを観たのかと想像してしまい、それが読み手の恐怖心を巧みに刺激してきます。

どれもなんとも言えない後味。究極の短編ホラーの中にはザラザラとした濃密な恐怖が。

「一行怪談」には他にも唸ってしまうぐらいにうまい、恐ろしい作品が数多く収録されています。

「一行怪談」は創作意欲を刺激されるフォーマット

「一行怪談」の形式は短いという括りがあるからこそ、どんな人でもアイディアさえあれば優れた短編ホラーが創作できそうです。こうやってフォーマット化された形式の中でどれだけオリジナリティーを出せるかですね。

ツイッターなどを見てもハッシュタグ「#一行怪談」や「#一行怪談創作部」で調べると多くの人が創作意欲を刺激されたのか、オリジナルの作品を発表しています。

ただ作品を怖がるのではなく、自分でも誰かを楽しませる「一行怪談」を作りやすいというのも、ちょっと面白い形式だなと感心しました。

そう思って、自分でも作ってみようとしばらく考えてみましたが、そんなに簡単には思い浮かばないものですね。

展開はいくつか閃くものの、短い中でどうやってまとめるか。その辺が「一行怪談」の肝になってきそうです。

寝る前の時間にもホラーを

「一行怪談」は何と言っても一つの究極の短編ホラーなので、寝る前の読書時間でも好きなように区切って読むことができます。

怪談やホラー小説などを読むと、続きが気になってついつい読書時間が延びてしまうことが多いので、その点「一行怪談」は寝る前読書向きな本です。

ただ、どの短編も想像力を刺激するので、読み終わってからもんもんとすることはあるかも。

「あの作品の続きって。。。」とかなってしまう可能性はありますが、たまにはホラー読んで寝るのも気分が変わっていいもんですよ。