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【おすすめ】三津田信三が選ぶ短編ホラー小説集「怪異十三」

ホラー小説よく寝る本

本日も快眠を目指すため、寝る前読書にぴったりな本をおすすめします。

といっても、本日の本は寝る前にふさわしいかどうか。。。

紹介する本は三津田信三さん編による「怪異十三」というホラー小説。

怪奇とミステリーを得意とする小説家三津田信三さんが選ぶ古今東西の短編ホラー小説集です。

人によっては寝る前に読むにはふさわしくないかもしれませんが、たまにはこういう本もいいもんですよ。

いや、寝る前にだからこそ引き立つホラーの魅力も。。。

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三津田信三おすすめの厳選された恐怖の短編「怪異十三」

編者の三津田信三氏とは

「怪異十三」に収録される短編ホラー小説を厳選したのはこれまたホラー小説家の三津田信三氏。

三津田信三氏といえば「首無の如き祟るもの」や「山魔の如き嗤うもの」などの刀城言耶シリーズに代表される作品の他、ホラーとミステリーを融合させた作品を多く残しています。

私も刀城言耶シリーズが好きなのですが、三津田信三さんの描く寒村に伝わるおどろおどろしい言い伝えや怪異の描写は実際に日本にあったんだろうなと実感させられるリアリティを持っています。

ただホラーを創作するのではなく、その舞台となる土地土地に昔から言い伝えられているという設定がミソ。

また、それが本物の怪異なのか、実は人間が引き起こしたトリックのある事件なのかも微妙にわからない、ホラーとミステリーの融合が面白いです。

ラストなどもなんともはっきりせず、不気味な終わり方のものも多く、その曖昧さも恐怖に一役かっています。

短いからこそ凝縮された恐怖

そんな三津田信三さんが厳選した13+1の古今東西の短編ホラー小説集「怪異十三」。

日本のホラーが7、外国のホラーが6。それと三津田信三さんの短編が一つ入った構成になっています。

私は昔から短編やショートショートの類が好き。短い中に一つの世界と結末が凝縮しているところが魅力。

この「怪異十三」も長くても10分ちょいぐらいで読み切れる短編ばかり。

しかし、そのどれもがなんとも言えないぞくっとする読み応え。古今東西のホラー小説や怪異に精通する三津田信三さんだからこその、えもいわれない怖さ。

それぞれアプローチが違い、それぞれ種類の違う「怖さ」が襲ってきます。

ホラー映画などの場合ですと、音楽といきなりの映像で驚かす怖さというのが主なような気がしますが、ホラー小説はそうもいきません。

イメージの怖さ。頭の中で小説の世界に没入する中、急に沸き起こる異変。違和感。

ささいな表現でぞっとする恐怖を生み出す、三津田信三さんをはじめ、各作家の力量が満ち溢れる作品が収録されています。

最もおすすめ!菊池秀行の「茂助に関わる談合」

不気味

三津田信三さんの短編を除く、13の短編ホラー小説の中で私がもっとも恐ろしかったのは菊池秀行さんの「茂助に関わる談合」。

菊池秀行さんといえば「吸血鬼ハンターD」が有名でしょうか。怪奇物も得意とされる作家さん。

私は大学生の頃「魔殺ノート退魔針」という漫画が好きで、その原作者というイメージが強いです。

さて、この菊池秀行さんの「茂助に関わる談合」は7ページほどの作品。

お話は館林甚左衛門という男の家に甥の喜三郎が訪ねてくるところから始まります。

その半月ほど前、喜三郎が奉公人を探していたので甚左衛門が自分のところで奉公している茂助という男を紹介しました。

訪ねてきた喜三郎が言うには茂助は人間ではないとのこと。しかし、その根拠などいまいち要領を得ません。

そうやって茂助のことについて話し合う形で物語は進んでいきます。

怪奇現象らしきものはおこりません。「茂助に関わる談合」のタイトル通り、ただ茂助についての要領の得ない会話が続くのみ。

それがなんとも不気味なのです。喜三郎の茂助に対する要領の得なさは尋常ではないのです。

喜三郎は一体何をしに来たのか、何が言いたいのか、茂助の何を伝えたいのか。要領を得ず、得体の知れないやりとりで不気味さは結末まで高まり続けます。

そして、ラスト。ネタバレになるので言えませんが、これほどぞっとさせられる、不気味な後味の結末は今まで読んだことがありません。

まさに短編ならではというストンとした終わり方なんだけれども、その先を想像せざるをえない怖さ。短い文章の中に凝縮された恐怖の切れ味が光ります。

「茂助に関わる談合」を創作した菊池秀行さんもすごいですが、これを選んだ三津田信三さんもすごい。数あるホラー小説の中でよくぞこれを選んだくれたと言いたいです。

読者のイメージを巧みに刺激する終わり方。ものすごく秀逸な短編ホラーですので怪異好き、ホラー好きの人には「茂助に関わる談合」を是非おすすめします。

寝る前にホラー小説をおすすめする理由

夜に寝る前にホラー小説を読む

正直、ホラー小説は快眠を目的とするならば、寝る前の読書にはおすすめしません。

ただ、寝る前の、暗い布団の中での読書にホラー小説を選んだ時をイメージしてみてください。

「怪異十三」のようなホラー小説は寝る前の読書にふさわしい本ではないかもしれません。しかし夜寝る前の読書こそがホラー小説を読むのにふさわしいシチュエーションであると言えるのではないでしょうか。より怖さを味わいたい人にこそおすすめの時間帯。

特に「怪異十三」はそれぞれが古今東西の秀逸な短編ホラー小説集ですので、様々な作家のアプローチによる恐怖を寝る前のわずかな時間に読み切るにも適しています。

私が最もおすすめする「茂助に関わる談合」など読み終えるまで10分もかかりませんが、その時間内に濃密な怖さが味わえるでしょう。

明々とした蛍光灯のもとで読むのではなく、薄暗い読書灯のもとで。

ただひたすらホラー小説の世界に没頭し続ける時間。

読み終わっても続く恐怖。はたしてすんなり眠れるのか、悪夢を見るのではないか、トイレに行けるのかという各種不安。

明るい空間の中では味わえない怖さが読書後も味わえます。

それがあるせいで、なかなか眠れない可能性も高いので、次の日に少々朝寝坊しても平気な時を見計らって前夜に読むのをおすすめします(三津田信三さん自身が書かれた小説もじっとり怖いので、興味のある人はそちらも読んでみてください)。