本日も寝る前におすすめの本を紹介いたします。
さてさて、度々になりますが、東海林さだお大先生の著作をば。
東海林さだお先生は漫画家であり、エッセイスト。この道数十年の大ベテランでもあります。
40年越えの連載をいくつか持ち、昭和、平成の時代を駆け抜けてきた猛者。
人によっては「ユーモアエッセイ界の一人横綱」の称号もふさわしいとの声も。
確かに、エッセイのユーモア、可笑しさにおいては他の追随を許さない面白さを誇っています。
その面白さは、私が求める寝る前の読書の本にふさわしく、常に枕元に東海林先生の著作を常備。
本日紹介するのは、そんな東海林さだお先生のエッセイ「猫大好き」。
このエッセイも東海林節満開です。
東海林先生のエッセイは寝る前の読書におすすめ
東海林先生の先祖は猫らしい
さて、この「猫大好き」というエッセイ。
タイトルのエッセイの他に様々なテーマで面白おかしく、ユーモアに満ち溢れた作品で満ち満ちております。
本書には出てきませんが、他のエッセイで「どうも自分の先祖に猫がいるにちがいない」と何度か言及されています。
理由は無類の魚好きというだけなんですけれどね。
魚好きというだけで、「先祖は猫」ということを書き記すなど、生半可な人がやったならばどすべりするような気がします。
しかし、東海林先生のエッセイ力があれば、「先生ならそういう結論に達してもしかたがない」と頷かざるをえません。
犬派、猫派?
東海林さだお先生は子供の頃から絶やさずに、猫か犬かのどちらかを飼っている状況なのだとか。
おそらく犬派、猫派という区分けはできないのでしょうが「猫大好き」の中では若干猫ヨイショ気味。
犬派律儀で忠義な生き物であるが、若干そういうところに疲れるなんてことも。まぁ、タイトルに持っていくためにこういう書き方しているだけで、その実犬も大好きなのでしょう。
猫の生態を様々な文豪の文章とともに説明し、猫の行き方を学ぼうではないかという提言も。
その内容たるや、決して世の中の役にたったり、実生活に反映するようなものではないのですが、確実の私の脳みそを「こねこね」ほぐしてくれるゆるいユーモアに溢れています。
「内臓とわたし」という章
東海林さだお先生のエッセイではあんまり無い、4章にもわたっての作品も。
「内臓とわたし」という題で実質的側面、哲学的側面などから内臓についていろいろと述べられています。
といっても、これも東海林節炸裂。自分のいうことなかなか聞かない各期間に対して、最終的に男性の股の間にぶら下がっているあの部分だけは「こっちの言い分を通してくれる」というはなしに。
シモネタっちゃぁ下ネタなんですが、いかに「あの部分」を婉曲に表現するかというのが見せ所。
一言も具体的ワードを使わず、読み手の想像力を限りなく掻き立て、なおかつエロさなく馬鹿馬鹿しい表現は東海林先生にしかできない匠の技の域にかかっています。
一番好きなのは「東京駅で一日暮らす」
「猫大好き」の中で一番好きなのは「東京駅で一日暮らす」というエッセイ。
東京駅から出ずに、飲食、楽しみごと、宿泊をこなして一日を過ごすという内容。
このエッセイを書かれた時の東海林先生のお歳は70歳越え。世間で言えば「おじいちゃん」と言っていいお歳、すなわち高齢者。
漫画界、エッセイ界において、もはや揺るぎない地位を持ち、多くの人の手本、憧れとも言える大先生が「東京駅で一日暮らす」ということを身を持って実践するとは。
こういうのって今でいうと若いユーチューバーがやりそうなことじゃないですか。
それを御歳70越えの重鎮作家がやられるというところに、東海林先生の凄さと面白さがあります。
このエッセイでも東京駅から出ず、かと言ってたてていた予定通りにもことが運ばずわりとぐだぐだに進行する様が魅力(ぐだぐだと言ってもそこも面白いのですが)。
東京駅内でお酒を飲んで、マッサージを受けて、その後「東京ステーションホテル」に帰っていくのですが
でもこの”八重洲地下街から千鳥足で東京駅内のねぐらに帰っていく気分”というものは、めったに味わうことのできないなかなかいい気分である。多分、生涯に一度しか味わうことのないであろう気分。優越、とかいうのでは全然なくて、和んだ気持ち、というか、ゆるやかな気持ち、というか、口笛の一つも注いでる、というようなくつろいだ気分。
東海林先生のエッセイは面白おかしいだけでなく、こういう心情表現もすごくうまいなと思います。
酔っ払って、でも帰りのことは気にしなくて良くて、いい気持ち。そんな情景が浮かんできます。
寝る前の読書におすすめなユーモアエッセイ
この「猫大好き」。寝る前の読書におすすめです。
というか、東海林さだお先生のエッセイ全て、寝る前の読書におすすめな作品ばかり。
気楽、リラックス、面白さ、おかしさ、ユーモアなど人を和ませる要素がたくさん詰まっています。
かと言って、無理に面白がらせようと鼻につくような表現ではなく、ほんと自然に「アハハ!」って感じになる面白さ。
ユーモアってこういうことかってわかるエッセイ。ひとを芯からくつろがしてくれるエッセイ。
だから私は東海林さだお先生のエッセイが大好きですし、寝る前の読書におすすめさせていただきます。
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