【映画感想】「アイリッシュマン」
Netflix配信「アイリッシュマン」とは
「アイリッシュマン」とはNetflixで配信されている、ギャング映画です。
フランク・シーランという男の回顧録的な構成になっており、シーランがかつて手を染めてきた犯罪とともに、アメリカの歴史が動いていく様を描いた映画。
実際にあった話を元にしており、かつて大統領の次に有名とされたジミー・ホッファとその暗殺にいたるまでの流れなど、アメリカの闇に葬られた話を掘り起こしています。
暴力、権力、金、友情、裏切り、公開など様々な要素が詰め込まれている「The ギャング映画」といった話。
何よりもマーティン・スコセッシとロバート・デ・ニーロの名コンビ、そしてアル・パチーノの共演などが「アイリッシュマン」の見所です。
マーティン・スコセッシとロバート・デ・ニーロのタッグ
最近「JOKER」の話題で、にわかに再注目されている映画に「タクシードライバー」と「キングオブコメディ」があります。
どちらもマーティン・スコセッシとロバート・デ・ニーロのタッグ。暴力、狂気を描いた映画で、「JOKER」に多大な影響を与えているとも言われていますね(「JOKER」にもデ・ニーロが出ていますし)。他にコンビを組んでいる映画といえば「グッドフェローズ」などがありますね。
『グッドフェローズ』鑑賞
・ロバートデニーロ
・レイリオッタ
・ジョーペシアイルランド系とイタリア系のニューヨークマフィアの友情と栄枯盛衰
CreamのSunshine loveのかかるシーン渋過ぎるやろ…
ニットシャツの襟をジャケットの外に出すこの時代の着こなしめっちゃ好き。
ネクタイも太いやつ。 pic.twitter.com/A7cDLUDVMN— DJ GANDHI (@dj__gandhi) November 25, 2019
私もつい最近「タクシードライバー」を観たのですが、デ・ニーロが徐々に狂気に染まっていくところや、暴力的な演技がすごく印象的でした(参考:映画「タクシードライバー」ラストの解釈と感想)。
マーティン・スコセッシ監督はどこかブチ切れたキャラクターを撮らせたら、天下一品。ちなみに私は「ウルフオブウォールストリート」と「ディパーテッド」が好きです。
(参考:ジャック・ニコルソンの狂気がほとばしる映画「ディパーテッド」)
名優たちの演技が冴え渡る
「アイリッシュマン」のストーリーとしては、老齢に差し掛かった元ギャング(犯罪者ではありますが、隠れギャングのような役。表の仕事あり)が過去を語るといったような構成。
全体として3時間半ある映画で、ストーリー的には目新しいものがあるというわけではないのですが、それでも観れちゃう。
なぜなら、名優たちの演技がギラッギラに光っているから。熟成されまくった、ギラッギラの濃ぃ〜い演技。
デ・ニーロの表では一般人を装い、裏では人殺しを平気で行うという二面性を併せ持った演技。権力にとりつかれながら、破滅への道を歩んでいくアルパチーノの演技。そして、ギャング界の大物で、ガタイこそ小さいものの、静かな凄みと迫力のあるジョー・ぺシの演技。
そのどれも、どのシーンも一つの絵のような芸術性があり「見惚れる」という例えがぴったりなギャング映画でした。
ちなみに、私は「アイリッシュマン」で主演の一人を務めるジョー・ぺシがどのような俳優か知らなかったのですが「ホーム・アローン」の泥棒役の人(帽子かぶった方)みたいです。「ホーム・アローン」からは想像もつかない、渋い演技を見せてくれますよ。
ホームアローンって色々映画観てから見直すと何かと豪華すぎるんだよね。
音楽はレジェンドだし。
監督もハリポタを大成功させた人。そもそも泥棒の一人がジョー・ペシってクソ怖い。ギャング映画普段観ない人がこの人見たらあの泥棒の一人…
でも実際は2枚目以降の役の人だからね…(笑) pic.twitter.com/pbXTVHRuxz— Kei :|| (@1977swthx) November 28, 2019
デ・ニーロとアルパチーノのギャングものはやっぱりいい
デ・ニーロとアルパチーノといえば、多くの人が「ゴッドファーザー」を思い浮かべるでしょう。私も真っ先に頭に浮かびました。
「ゴッドファーザー」の頃は、お二人とも若い中で、老齢の役などもこなされています。しかし、若さなど微塵も感じさせぬ、いぶし銀の演技。「アイリッシュマン」ではお二人とも歳を重ね、うちからにじみ出る、経験を重ねたものだけにしか出せないようないぶしの味を見せてくれています(参考:「ゴッド・ファーザー3」名シーン。マイケルの絶叫に込められたもの)。
「アイリッシュマン」では二人とも老齢(70代後半!)な中で、40代ぐらいの役もこなしています。
俳優ってすごいなと思うのが、デ・ニーロもアルパチーノも全然歳を感じさせない。若い時代にはその年齢に見えるし、よぼよぼの頃には、実年齢以上によぼよぼに見える。これこそ芸の力!
次の仕込みをしていたが、切り上げて「アイリッシュマン」を観る。10代の頃に映画の在り方と素晴らしさ、映画を通して生き方を教えてくれたスコセッシ、僕のヒーローだったデ・ニーロがまた創作の持つ力を説いてくれた。現場制作者として老いから来る不調を危惧していたが、杞憂だった。明日も働こう。 pic.twitter.com/YZKsdtWwn0
— 小島秀夫 (@Kojima_Hideo) December 2, 2019
CGの新たな使われ方
デ・ニーロ、アルパチーノを含め、若い頃の役もこなします。もちろん、名優の芸の力によるところでカバーできる部分もあるのですが、どうしても顔のシワなどを隠すことはできません。
たとえば、特殊メイクなどで、若い人を老人にしたりその逆をやったりする場合もありますが、結構目立ってしまうものです(たとえば「ベンジャミン・バトン数奇な運命」の老人メイク)。
今回「アイリッシュマン」では、CGによる若返り技術が使われているそう。顔に細かいポインターなどをつけておこなているみたいです。ですので、本人がそのままの表情で、自然に若返りができるというもの。
CGが使われているなど、実際観ている時には全然気づかせないぐらい、自然な若返りがされていました。
「アイリッシュマン」のメイキングも見逃せない
CGなどについては、「アイリッシュマン」を観終わった後に、メイキングでみることができます(「アイリッシュマン」本編が終わると、メイキングへのリンクが出てくる)。
マーティン・スコセッシ、ロバート・デ・ニーロ、アルパチーノ、ジョー・ぺシの四人がめちゃくちゃ渋いバーみたいなところで対談するというもの。
世界を代表する映画監督と名優たちの、夢の座談会。演技について、お互いの中について、CGを映画に活用することについてなど、それぞれ語り合っていました。
本編ももちろん良かったのですが、この「アイリッシュマン」のメイキングがすごく良かった!普段観ることのできない、名優たちのナチュラルな姿。しかもデ・ニーロとアルパチーノの二人が普通に語り合うという、豪華さ。
本編は3時間半あり、観終わった時には相当くたびれているかもしれませんが、是非ともメイキングも観て欲しいです。
【感想】「アイリッシュマン」は名優たちの演技に魅せられる映画
「アイリッシュマン」の感想としては、とにかく名優たちの演技が素晴らしいの一言に尽きます。
素晴らしい名優たちが、歳を経て、そして様々な映画に出演する中で蓄えてきたものが、存分に発揮されている。そこには、凄みや恐ろしさや、悲しさがないまぜに。経験や実力のない俳優では、まず表現できないような表情が見所
特にレストランやバーなどのシーンは、暖色の光に包まれつつも陰影が強調されており、デ・ニーロやアルパチーノの逡巡する様子が、痛く伝わってきます。
友情や裏切りがある中で、人が持つ感情の様々な部分が巧みに描き出されている映画。ギャングものというジャンルはそういう、清濁合わさっているところが魅力なのかも。
もう一つ良かったのが、老齢に差し掛かった元ギャングの懐古録という体裁をとっているところ。ギャング映画って、ラストは死で終わるか、どこかに行ってしまうかみたいな終わり方が多いですが、こういう老齢にさしかかった場面を描くのもいいです。
そこにあるのは、あたたかな老後ではない、寂しいもの。「ゴッドファーザー」のラストでもそうでしたが、こういうことを描くことによって、暴力の悲惨さ、一時の勢いみたいなのの虚しさなどが深く伝わってくるからです。
Netflixでの配信ですので、「アイリッシュマン」はぱっと観れる類の映画ではありません。しかし、デ・ニーロやアルパチーノで心揺り動かされた経験のある人には是非見て欲しい映画でした。