昔から、怖がりな割にホラーが好きです。小説、映画どちらともにホラー好き(お化け屋敷とかは苦手ですが)。
昨日「ジェーン・ドゥの解剖」という映画を観たのですが、これが今までに見た事のない感じの、新鮮なホラーでした。
近年観たホラー映画の中で、怖さで言えばトップクラスのゾクゾク感。そうそう、こういうのが観たかったんだ!
近年のホラーはコメディやおちゃらけ要素満載なものが多いですが、「ジェーン・ドゥの解剖」は本格派な怖さを味わえる映画でしょう。
怪異の正体なども含めて、この映画の考察や感想を記していきます。
※ネタバレを含みます
【考察】ジェーン・ドゥは何者なのか?
「ジェーン・ドゥの解剖」のあらすじ
まずは「ジェーン・ドゥの解剖」の簡単なあらすじをば。
アメリカバージニア州で一家惨殺事件が起こります。その家の地下には全裸の美女の遺体が埋められていました。彼女は身元不明の遺体(ジェーン・ドゥ:jane doeとは英語で名無しの権兵衛や身元不明者の意味)で解剖に回される事に。
検死解剖を手がけるトミーとオースティン親子の元に、ジェーン・ドゥの遺体は回されます。いつものように、死因を特定すべく解剖を進めていく二人。
ジェーン・ドゥの遺体は舌を切断されている以外は外傷などはなく、きれいな状態。しかし彼女の体内は、手首や足首の骨が粉砕、内臓に不可解な傷、黒く変色した肺など、常識的に考えて外傷がなければ起こりえない状態にありました。
また、胃や消化器の中から、謎の文様が記された布が。どうやら、彼女は何かの儀式の末に死に至ったように思えました。
淡々と解剖を進めていくとニートオースティン親子。しかし、ジェーン・ドゥの解剖を進めていくうちに、数々の怪奇現象が起こり出します。。。
グロ要素、密室劇、怪奇現象
正直なところ「ジェーン・ドゥの解剖」をホラーと知らずに観ていたので、怪奇現象が起こってびっくり!てっきりサスペンスか何かだと思い込んでいました(笑)
地下にある古びた検死解剖施設。そのシチュエーションだけでも相当怖い。最初の段階で、いくつか変死体は出てくるし、初っ端からグロ要素が多い映画。
ゾンビ物のホラーなどで、切り刻まれたりのスプラッター要素はよく見ますが、こうやって遺体を淡々と解剖していくのは精神的にくるグロさ。しかも映像がリアルなだけに、なおさら。
そういう解剖を経てこの謎の美女の遺体ジェーン・ドゥの死因が明らかになっていくのかなと思いきや、突如起き出す怪奇現象。ラジオの異変、急な停電などなど。
怪奇現象といっても、はっきりこれといった怪物やゾンビ、幽霊の類が現れないところも怖さの一因でした。「出るぞ出るぞ!」と思わせておいて、出て来ない。ただ、最初に出てきた変死体などには足に鈴が付けられており、その鈴の音だけが見通しの悪い廊下の向こうから聞こえてくるだけでも、ものすごい恐怖感はありました。
中盤、停電や嵐のせいで、地下の検死解剖施設は密室状態になってしまいます。ますますエスカレートする怪奇現象。エスカレートはするけれども、具体的な何かが出て来ない!後半になっても、部分的だったり、シルエットだけだったりで、そのモヤモヤ感が余計に怖かったです(日本のホラーに近いかも)。
【考察】ジェーン・ドゥは何者であり、どうなったのか?
ジェーン・ドゥは結局何者なのか?映画内でも語られていますが、彼女は17世紀に魔女狩りにあった人物なのでしょう。消化器から出てきた布に書かれていた内容からも、恐らくはキリスト教徒からの迫害にあったものと思われます。彼女が実際に魔女であったか、もしくは無実の罪を被せられ者なのかははっきりとわかりません。
しかし、彼女が魔女として拷問を受ける中で、何か悪しき者がジェーン・ドゥに宿り、呪われた存在へと変わった。彼女は生きることも死ぬこともない、ただ苦痛を感じ続ける存在。そして自身を傷つけるものに、同じ苦しみを味あわせる、呪われた復讐の存在へと変質したのです。
当時の人は、何を行っても破壊することができず、また呪いが降りかかるので、遠く離れた地に埋めたのでしょう。それが現代になって掘り起こされてしまった。
後半、解剖医の父トニーが呪いの事実を突き止め、ジェーン・ドゥの苦痛を自身で引き受ける代わりに、息子のオースティンを救おうとします。彼女と同じようにトニーの手や足首が折れ、肺が焼けただれていくうちに、解剖され切り刻まれていたジェーン・ドゥの遺体が徐々に復活していきます。しかし、生き返るといった感じではありませんでした。
ここ考察するに、彼女は誰かを傷つけようなどという目的などなく、無差別に自分を傷つけるものを呪う存在なのだと思いました。もしかしたら意識すらないのかもしれません。しかし、彼女は苦痛を感じ取り、死ぬこともない。ただ、自身を傷つけた存在を呪い、その対象が同じ苦しみを持って死ぬことで、また命が永らえるような、そういう存在なのではないでしょうか。
このあとどうなるのか。おそらく、ジェーン・ドゥはただ、そういうものとしてあり続けるのだと思います。解剖をしても、復活してしまう。燃やすこともできない。ただ、呪いの存在として、現世にあり続けるのかもしれません。
(ラスト、別の施設に移送されるジェーン・ドゥの遺体が、少し動くシーンがありますが、オースティンが死ぬ場面においても彼女の動きだす兆しがなかったので、生き返るという感じではないと考えました)
最初に惨殺されていた家族は何だったのか?
ジェーン・ドゥが発見されるきっかけとなった、ダグラス一家惨殺事件。ダグラス夫妻と雇われの男の三人が殺されていました。
冒頭の段階では、ダグラス一家に雇われていた男が、ジェーン・ドゥの死体を埋めようとして一家を殺したとあります。もみ合った末に、みんな死んでしまったということでしょうか。
しかし、恐らくは何かの拍子にダグラス家の誰かがジェーン・ドゥを掘り起こしてしまい、その呪い(祟り)に触れてしまった上での惨殺事件ではないでしょうか。
数百年前に埋められたであろうジェーン・ドゥの遺体には、昔受けた苦痛の呪いが残っていたのでしょう。それに触れてしまったダグラス家は呪いの被害者になったのだと考えます。
【感想】エロスと恐怖
ジェーン・ドゥ役オルウェン・ケリーの美しさ
変死体で見つかったジェーン・ドゥ役のオルウェン・ケリーが美しエロすぎるので、そんな彼女が解剖されていくシーンはいろんな意味でゾクゾクくる。 #ジェーン・ドゥの解剖 pic.twitter.com/vNtsXURyb4
— 腸(はらわた)△ (@harawata_26) October 30, 2018
この映画で、ジェーンドゥ役をやっているのはオルウェン・ケリーという女優さんです。一度も動くことのない死体の役というのもかなり難しいものがあったでしょう。
ところで、このオルウェン・ケリーさんは作品中、不思議な美しさで異彩を放っています。
遺体役ということもあり、肌を真っ白に。そして目は白濁した状態。そこに、生き生きとした人間味はないのですが、冷たく透き通った美しさが。
エロスと恐怖は合う
「ジェーン・ドゥの解剖」の怖さは、このオルウェンさんの美しさとエロスが重要なカギだなという感想を持ちました。
基本、映画の中でオルウェンさんは全裸の遺体役。顔も美しいですが、体そのものも大変綺麗!
しかし、彼女は遺体の役なのです。そこにエロスを感じることは背徳的なこと。だけど、やはり意識せずにはいられない。
そういう視聴者側に葛藤させる美しさとエロスが、ジェーン・ドゥにはある。
そもそも、全裸の女性の遺体が横たわっているシチュエーションなんて絶対に身の回りにはないことであるし、どのような心持ちでこの状態を見ればいいのか。
少なくとも「ただの遺体である」という感情以上の背徳感的な葛藤があるかと思います。ツイッターとか見てても、「オルウェンさんが美しすぎる!」という感想を持つ人が結構います。
『ジェーン・ドゥの解剖』をアマプラで見ました
終始解剖される側の美女が美しすぎて怖い
グロテスクな解剖がずっと続くので人を選ぶけど、だんだん耽美にも見えてくる見せ方が怖い
アレをベロってしたところがめちゃくちゃエロい怖い— よしひ (@yoshihi_) November 2, 2018
たとえば、この遺体役がゾンビであったりとか怪物であったりとか、ミイラだったりしたらそこまで怖かったであろうか。ミイラが解剖されていく様もそこで巻き起こる怪奇現象もこれほどまでに怖くはならなかったであろうと思います。
不思議な美しさのある全裸の遺体。美しいだけに、解剖時のグロさはより際立った感じが。そして、それはピクリとも動かないのに周りではばんばん怪奇現象が起こりまくる。それでもピクリとも動かない。
いっそ「ガバッ!」と跳ね起きてくれた方が怖くないと思います。常に「何かが起きるんじゃないのか?」という緊張感が怖い!
全裸の美女の遺体。それが常にあるという不可思議なシチュエーション。エロスな要素がありつつも、倫理的にエロさを感じてはいけないんじゃないかという葛藤。そういう葛藤した心理状態に、恐怖が容赦なくたたみかけてくる映画。最後の最後まで、先の見えない展開はホラー映画として十分満足な怖さを味あわせてくれました。
最近巷に溢れている軟弱でコメディーよりのホラーに飽き飽きな方にもきっとご満足いただける作品かと(本記事執筆時点で、アマゾンプライムやNetflixで配信されています)。ちなみに、内臓や血などがっつりでてきますので、グロが苦手な人には絶対におすすめできない作品です(笑)
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