小さい頃、怖かった映画の中でスピルバーグの「ジョーズ」という傑作があります。
有名な映画ですし、続編もたくさん作られて観たことのある人も多いのでは。サメが人を襲うというシンプルなプロットながら、生存本能に響くような恐怖感。
それから数十年の間、「ジョーズ」を模倣した数多くのサメ映画が作られました。私もいくつか観たことはありますが、そのどれもはB級テイストであまり怖さはなし。
特に最近の作品でおおいのが、予算がないせいかCGで作られたサメのクオリティが低く、そっちに気が散ってしまうものも。
そういうわけもあって、「ジョーズ」以外のサメ映画に面白いものはないというイメージがありました。
しかし、私のそんなイメージを払拭する作品が!その名は「シャークネード」。その面白さに、最終作の6まで一気に観てしまいました。
怖い映画ではない、パニックホラーものとも言い難い。サメ映画ではあるんだけれど、そういうことはむしろ問題ではない。
いわく言いがたい、魅力をぷんぷん放つ「シャークネード」のご紹介です。
「シャークネード」最高に面白いサメ映画はこれだ!
「シャークネード」とは
「シャークネード」とはアメリカのテレビ映画。劇場で公開されたものでなく、テレビ放送目的で作られた映画です。
主人公はフィン・シェパードというサーファー。彼が経営するロサンゼルスのバーの近くでトルネードが発生。
なんとそのトルネード、海から大量のサメを巻きあげていました。シャークネードとはシャークとトルネードをくっつけた言葉です。そしてサメを伴ったままロサンゼルスに上陸。
サメなどというものは海から出れば怖くないというものですが、シャークネードによって、サメがばんばんと空から降ってくる。陸上にいても安全な場所はなし。
どうするフィン・シェパード!というのがものすごく大雑把な話の流れ。
まず覚えておいて欲しいのは、シャークネードによって、サメが空から降ってくるという一点です。
「シャークネード」はバカバカしい
「シャークネード」ではトルネードに巻き上げられたサメが空から降ってくる。一見パニックホラーのようにも見えますが、そんなところは問題じゃない。
台風に気をつけろよ
シャークネードより酷くはないだろうが、飛んでくるものに注意だ! pic.twitter.com/YVkeEwCEGZ— 権田メサ🦈 (@same_dagon) September 8, 2019
「シャークネード」の一番の魅力!それは回を増すごとに加速していくバカバカしい面白さにある!
そう、この映画は「ジョーズ」の跡に雨後の筍のごとく作られた他のサメ映画とは一線を画した傑作。一見パニックホラーもののように見えて、実はうちにおバカを隠し持った傑作B級映画なのです!
チェーンソーでサメに丸呑みされても生還
1のラストでフィン・シェパードはチェーンソーを持ってサメに挑みます。豆腐のごとくスパスパ切れるサメ達。しかし、勇猛果敢なフィンもサメに丸呑みされることに。しかし、チェーンソーでサメの腹をかっさばいて無事生還するところで1は終わります。
一瞬でも頭を働かせてはいけません。「チェーンソーなんかで、なんでこんなにサメがスパスパ切れるんだ?」、「はぁ?サメに丸呑みされる?」とか真面目なことを考えてはいけないのです。とにかく馬鹿になって、ぼーっとその世界のバカバカしさに身を委ねてこそ、「シャークネード」の面白さを十二分に楽しめるのです。
この「チェーンソー」と、「サメに丸呑み」というというワードはその後のシリーズでもしっかり引き継がれ、よりバカバカしい面白さに磨きをかけながら物語に絡んできます。
「シャークネード3」でしびれた大気圏突入方法
特にこの「サメに丸呑み」という部分で、一番のバカバカしさを感じたのはシリーズ第三作目。
主人公フィン・シェパードはシャークネードを吹き飛ばすため、もと宇宙飛行士候補だった父親と、妊娠中の妻エイプリル(片手にチェーンソーが埋め込まれている)とともにスペースシャトルで宇宙に飛び立ちます(この時点ですでにバカバカしい)。
当初はスペースシャトルの燃料でシャークネードを吹き飛ばす予定でしたが失敗。しかしフィンの父親が密かに計画し宇宙空間に浮かべていた、スターウォーズのデススターのような機能を持った装置でなんとかシャークネードを消滅させることができました。
しかし、先ほどのシャークネードで宇宙空間に飛ばされてきたサメ達がフィンを襲います。フィンはライトセーバーのようなチェーンソーを使い、ばったばったとサメを切り刻む。しかし、サメはスペースシャトルを破壊してしまいます。
宇宙空間でサメに飲み込まれる妻エイプリル。そしてフィンもサメに飲み込まれてしまいます。そのサメは地球の重力に引き寄せられ、そのまま大気圏突入。
地面に叩きつけられた黒焦げのサメ。その腹の中からフィンは生還するのです!なんというバカバカしさ!
しかもそれだけでは終わらず、同じくサメに飲み込まれて生還したエイプリルは、サメの腹の中で出産(生まれた子の名前はギル)まで終えてしまっているという周到さ。一体こういうアイディアはどこからでてくるのか?
きっと作家がバーか何かで、大リーグなんかを見ながら大酒くらい、大分酔っ払ってノリで作ったような、そんな支離滅裂さがめちゃくちゃ面白いのです。
バカバカしい面白さは加速していく
先ほども書きましたが、シャークネードはシリーズを追うごとにバカバカしさが加速していきます。1では辛うじてパニックホラーテイストは残っていたものの、2以降はいかにバカバカしく壮大な展開になっていくかが見所。
3で生還したシェパード夫婦でしたが、そのラストでエイプリルはスペースシャトルの破片にあたって意識不明に。
4の途中からはロボットになって蘇るというもはや何の映画かわからない状態に。5では世界中で発生したシャークネードのせいで、世界は崩壊。しかし、未来から来たフィンの息子ギルによって、過去のシャークネードを止めに行く展開に。
そして最終章の6では様々な時代にタイムスリップしながら、シャークネードの根本を止めようという、げっぷが出るほど壮大でバカバカしい展開へと発展していきます。
正直、どの作品も、映画としてのクオリティは高くない。映像もいかにもCGだし、演技もいまいち(特に妻エイプリルの演技はなんともいえない)。しかし、それらのクオリティがA級ではなくB級だからであるこそ、シャークネードの面白さは引き立つのです。
これが、しっかり作り込まれて、一流の役者が演じていたのであればここまでのバカバカしい面白さは醸し出されなかったことでしょう。
「シャークネード ラスト・チェーンソー 4DX」シャークネードシリーズのラストは!(ネタバレあり)
こういうどこまでもバカバカしい「シャークネード」シリーズですが、ラストは意外にもまとまりのあるものでした。
シリーズの6作目にしてラストである「シャークネード ラスト・チェーンソー 4DX」でどうなるのかを少し記したいと思います(以下ラストに関するネタバレ含みますので注意!!!)
5のラスト、シャークネードによって世界は崩壊してしまいます。シャークネードを止めるために、バラバラなってしまったロボット状態の妻エイプリルの首とともに取り残されたフィン。
そんな中、未来から来た息子のギルによって、フィンとエイプリルの首は恐竜時代に送られます。
なんとそこには人間の頃のエイプリル(3でスペースシャトルの破片が落ちる直前に救助されていたらしい)が。その他にもこれまでのシリーズで亡くなったと思われた仲間達が!
彼らとともに、過去の時代からシャークネードの原因を止めるために、様々な時代にタイムスリップします。
しかし、時代時代で一人づつ減っていく仲間達。その途中でエイプリルやロボットエイプリルの首との別れも。
そんな中、タイムマシンの設定ミスでたどり着いたのは遥か1万年後の未来。その時代には人類はもはやおらず、ロボサメと大量のエイプリルロボが支配しているのでした。それは過去に紛失したロボットエイプリルの頭部から生まれた軍団。
襲いかかってくるエイプリルロボたち。しかし、その時代には人間のエイプリルもいて、二人の戦いに。その時のエネルギーによって、フィンはもう一度タイムスリップします。
タイムスリップした先は、「シャークネード1」の冒頭で出てくるサメ漁船(密漁船?)のシーン。我々観客が一番最初にシャークネードを目撃する場面です。
しかし、未来のエイプリルロボもその時代に。再度戦いが。しかし、度重なるタイムスリップの影響か時空の歪みが生じ、カオスな映像に。
そんな中、ロボットエイプリルの頭部(これは未来から来たロボットエイプリルとは別物)は自らを犠牲にして、この歪んだ時空を収束させようとします。カオスな時空の中、フィンは勝利を収めることになるのですが、、、。
次のシーンでは「シャークネード1」で最初にフィンのお店が出てくるシーンに変わります。しかし、その世界ではシャークネードは存在せず、フィン・シェパードの家族も、仲間達も平和を楽しんでいるのでした。
フィンとエイプリルの戦いによって原因がすべて阻止された結果、シャークネードのない平和な時間軸が誕生したのです。そうして、この「シャークネード」シリーズは幕を閉じるのでした。
いやぁ、まさか最後にこんな終わり方になるとは。これだけバカバカしさを追求してきたような映画だけにこの終わり方は意外でした。
こういうタイムスリップ系で過去を変えて、悲惨な現代を変えるというのはある種禁じてな感もあります。作品によっては「なんだよ!これは!」ってなる人もいるでしょう。
しかし、私の感想としては、これはありかなと。フィンの活躍により、過去は変えられ、シャークネードに苦しまない新しい時空を彼らは生きていくことになります。
しかし、それを得るために苦しみ戦ったフィン達の軌跡がなくなったわけではありません。あのバカバカしい戦いは確かに存在するのです。それがあるからこその、「シャークネード ラスト・チェーンソー 4DX」の平和なラストがあるわけです。
しれっと、平和なラストですが、バカバカしくてとっちらかったまま終わるよりはこういう終わり方のほうが「ああ、なんか良かった」って余韻が楽しめるのではないでしょうか。
もちろん、厳密にタイムスリップのこととか、タイムパラドックスのこととか気になりだしたらきりがありませんが、「シャークネード」好きの人はそんなことを気にかける人もいないでしょう。
むしろ「あー、面白かった!これでラストか、寂しいぜ、ちくしょう!」ってなぐらいの心持ちで余韻を楽しむぐらいがちょうどいいでしょう。
長々と書きましたが、この「シャークネード」シリーズは今までに体感したことのないベクトルのバカバカしい映画でした。コメディとして作っているわけでもなさそうなのに、コメディでしかない面白さ。
大人の悪ふざけ、悪ノリがうまくはまって「そうそう、こういうの大好き!」って展開が随所に散りばめられている作品でした。今後もこんなテイストの映画に出会いたいものです!
(ちなみに、Amazonの関連映画でちらちら目に入って気になっているのが『メガ・シャークVSグレート・タイタン』。たぶん観ませんが笑)