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「100年の難問はなぜ解けたのか」ポアンカレ予想をめぐる本

読書録

世の中には、数学者という人種がいます。その人生を数学に捧げ、日々研究にいそしむ人々。

私などは高校の時に数学は苦手で「なんでこんなことをやっているのだろう」というたちでした。

「Σとかいったい、いついかなる時に使うんだ?」と疑問に思いながら、割と苦痛な感じで授業を受けていた思い出があります。

大人になって、そんな数学とも離れた今。時折、数学とはなんだったんだろうと思う時があります。もしかしたら理解しさえすれば面白かったのかもと。

以前「フェルマーの最終定理」という本を読み、数学そのものはわからずとも、数学者という人々の生き方にとても魅力を感じました。

今回読んだのは、ミレニアム懸賞問題の一つで世紀の難問とされたポアンカレ予想が解かれるまでの物語「100年の難問はなぜ解けたのか」です。

ポアンカレ予想という数学上の世紀の難問と、それに挑んでは打ち破れていった数学者たち。そしてついにそれが解かれる時が!しかし、その後の意外な顛末。

ある意味人間ドラマとも言える「100年の難問はなぜ解けたのか」のご紹介です。

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「100年の難問はなぜ解けたのか」ポアンカレ予想に挑んだ数学者たちと、天才のその後を描く本

NHKスペシャル「100年の難問はなぜ解けたのか」の本

本書はNHKスペシャル「100年の難問はなぜ解けたのか」を書籍化したものです。

NHKスペシャル 100年の難問はなぜ解けたのか~天才数学者 失踪(しっそう)の謎~
宇宙はどんな形をしているのか。近年、この謎に迫る数学の難問「ポアンカレ予想」が、ロシアの天才数学者、・・・

ポアンカレ予想という、宇宙の形を読み解くために重要な数学の定理。そのあまりの難しさから100年にわたって解かれることはありませんでした。

しかし、2002年にロシアの天才数学者グリゴリー・ペレリマンの発表した論文によって、解かれることになります。

ポアンカレ予想を解いたことによりペレリマン氏は数学会のノーベル賞ともいえる「フィールズ賞」に選ばれました。しかしペレリマン氏は受賞を拒否し、またミレニアム懸賞問題の賞金100万ドルも受け取ることはありませんでした。

「100年の難問はなぜ解けたのか」ではポアンカレ予想とは何かをごくわかりやすく解説するとともに、それに挑んでいった歴代の数学者の顛末、そして解かれるまで。そしてペレリマン氏の実像と今に迫ったドキュメンタリー作品。

数学の難問に迫る本の面白さとは

以前読んだ「フェルマーの最終定理」と同じく、「100年の難問はなぜ解けたのか」もものすごくわくわくさせられる本でした。

「数学の難問について扱った本でわくわくできるの?」と思われるかもしれませんが、実際読んでみるとまるで大河小説のような、壮大なファンタジーのような面白さがあります。

数学界に立ちはだかる難攻不落の難問たち。様々な数学者たちがそれを解こうと人生をかけて挑みますが、あるものは途中で諦め、またあるものは正気を失ってしまい奈落へと突き落とされるものさえいます。

アイディア

しかし、絶対に解けないような難問でも、何かしらの解決に向けたヒントが見つかることがある。次世代の数学者たちは、そのヒントを武器に難問に挑む。そうした繰り返しの積み重ねがあってこそ、世紀の難問と呼ばれるものも解決されてきました。

大河とか漫画とかでもありますが、強大な敵の前に親の世代ではどうにもならなかったものが、子供、孫の世代でより力をつけて、先人の知恵を武器についに打ち破るという展開。数学の難問についての本はそれに似ているような気がします。

本書「100年の難問はなぜ解けたのか」はポアンカレ予想についてざっくりと説明されていますが、素人ではあくまで非常に大雑把なところしか問題そのもについては把握することができません。

ですので、あくまでポアンカレ予想というものの理解というよりも、それをめぐる100年をかけた壮大な物語と人間ドラマを楽しむといった本であるなという感想を持ちました。数式とかはあんまり出てこないので数学が苦手な人にでも大丈夫です。

なぜ数学の難問を解くのが重要なのか?

本書の中で、数学の難問に挑戦することの重要性が簡潔に述べられていました。

たとえば紀元前に証明されたピタゴラスの定理。学生時代にならったものですが、現代でもGPSや測量をはじめとした様々なものに利用されています。

一見なんの役に立っているのかわからなくても、数学というのはバックグラウンドで我々の生活を支えてくれているもの。

今現在難問とされているものも、解かれることによって、私たちの生活のアップデートにつながる可能性が高いのです。

ポアンカレ予想に関しても、宇宙の形を数学的に把握する上で非常に重要な定理のようです。現代の技術では物理的に観測することが困難な宇宙の形。しかし数学者たちはポアンカレ予想を用いることによって、知の世界で誰も見たことのない空間を把握しているのかもしれません。

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なぜ数学者たちは難問に臨むのか?

時として、数学者の人生をも壊しかねない難問たち。ポアンカレ予想に関しても、それに挑戦し人生が狂っていった人たちも紹介されていました。

それでも、数学者たちは難問に挑戦し、それを解こうとする。なぜ数学者たちは難問に挑むのか。「100年の難問はなぜ解けたのか」にその思いがつづられています。

数学者が問題に挑む動機、それは未知なるものへの憧れです。数学者に意欲を起こさせるものは、子供たちに意欲を起こさせるものとまったく同じです。ただ、知らないことを知りたいのです。
(中略)
数学者の好奇心は南極やアマゾンを発見した探検家たちとも変わりません。いまやこの地球上では、まったく未開拓だと思われる場所はだいぶ少なくなってきました。でも頭の中の知的世界には、何の制限もありません。未知なるものは無限にあるのです。

数学者たちを突き動かすもの、それはシンプルな知的好奇心にあるようです。それ知の未開拓地。それを開拓していく上では、犠牲も出ることでしょう。しかし、そういうリスクがあろうとも、その先に広がる誰も見たことのない世界(理解・心理)を誰よりも先に見たくて、数学者たちは日々難問に挑戦しているのだと思います。

ポアンカレ予想を解いた天才数学者ペレリマン氏のその後

森林

世紀の難問とされたポアンカレ予想は、ロシアの天才数学者グレゴリー・ペレリマン氏によってついに解かれることになります。それはあまりに独創的な方法で、当時理解できる人がほとんどいなかったようです。

その偉業にフィールズ賞が送られることになりますが、ペレリマン氏はそれを拒否し、ロシアでほとんど誰ともふれあうことなく孤独な生活を送るようになりました。

天才数学者ペレリマンが挑む 宇宙の形

かつては活発で人付き合いもよかったとされるペレリマン氏。しかし、ポアンカレ予想を解こうとする道のりの中で、どんどんと孤独な世界へと足を踏み入れていきます。

「100年の難問はなぜ解けたのか」の中でも、何度もペレリマン氏にインタビューを試みますが、結局それが叶うことはありませんでした。

それまでかろうじてコミュニケーションを取れていたペレリマン氏の恩師も、最後の方には拒絶されてしまいます。天才数学者にいったいどのような心境の変化があり、どうしてこのようになったのか。真相は誰にもわかりません。

恩師のアブラモフ先生はラストにこんなことを言っています。

彼は二五年前とはまったく別の人間になってしまいました。私には、いま彼に何が起こっているのかわかりません。彼の生きている世界は、私たちが生きている世界とは、もはや違うようです。
ポアンカレ予想を証明することは、私たちには想像すらできない恐ろしい試練だったのかも知れません。その試練を彼はひとりでくぐり抜けました。しかしその結果、彼は何かを失ってしまったのです

強大な、長年難攻不落の数学界の難問「ポアンカレ予想」を陥落したペレリマン氏。しかし、その代償は人知を超えるものだったのかもしれません。

神話や物語などに、怪物や神々に戦いを挑み、倒した結果何かしらの罰を受けるという勇者の話があります。私にはペレリマン氏の結果がそのようなものであったように思えてなりません。

人付き合いを拒むようになったペレリマン氏。しかし、氏は森を探索し、キノコ狩りを楽しむということはしているようです。

ポアンカレ予想を解くことで、神域ともいえるような知の世界を見てしまったペレリマン氏。これまでの価値観は崩れ去り、新しい世界で、そこはかとない喜びを見出す生活を送っているのかもしれません。

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