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感想「穴 HOLES」伏線回収が見事な児童書

「穴 HOLES」ルイス・サッカー著読書録

私の家の近くの図書館は比較的児童文学書や絵本コーナーが充実しており、連日親子連れで賑わっています(こういう子供に対して読書の門戸が開かれているのはいいですね)。

2週間に一度は図書館に足を運ぶのですが、児童書コーナーに行くのは年に数える程度。

それでもたまに行くと意外な本に出会えたりするのが魅力です。

先日、図書館に行った時に児童書コーナーで見つけたのが、ルイス・サッカー著「穴 HOLES」。

このシンプルなタイトルになにか無限の物語の可能性を感じて、即借りることに。

ひょんなことから、穴を掘り続けなくなった主人公と、その一族の因縁にまつわる不思議な小説「穴 HOLES」のご紹介。

(※多少ネタバレあり)

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感想「穴 HOLES」伏線回収が魅力!先祖が受けた呪いからのリベンジ

「穴 HOLES」の簡単なあらすじ

「穴 HOLES」の主人公のスタンリー少年は、先祖代々ついていいない家柄。まぬけなひいひい爺さんが豚を盗んだせいで、呪いをかけられたという言い伝えがありあります。

ひいじいさんは大金持ちになりかけながらも、女盗賊に全財産を奪われた挙句、身ぐるみ剥がされたという運のなさ。スタンリーの父親もうだつのあがらない発明を続ける貧乏暮らし。

そんなスタンリーはある日、野球選手のサイン付きスニーカーを盗んだといういわれなき罪を負わされ、その罰としてグリーンレイクキャンプというところに送られるはめに。

グリーンレイクキャンプとは悪事を働いた子供の矯正施設。グリーンレイクとは名ばかりで、送られた先は水っ気など全然ない不毛の地。そこには、全国から何かしら悪事を働いた子供達が集められています。

そこを支配するのは所長、そしてカウンセラーと称する人々。

彼らは子供達に、毎日毎日穴を掘る仕事を命じます。直径、深さ1.5メートルの穴を。来る日も来る日も毎日毎日。唯一の希望は、もし穴を掘る途中で、何か不思議な、面白いものを見つけた場合にはその日の穴掘りは免除されるというもの。

一応矯正のためという名目はあるものの、なぜ穴掘りをさせられるのか。しかもこんな不毛の地で?スタンリーは毎日苦しい穴掘りを続ける中、ゼロという少年と友達になります。そんな二人に大きな転機が。

スタンリーのひいおじいさんがなぜ呪いを受ける羽目になったのか、そして不毛の地グリーンレイクで何があったのか。

スタンリーのグリーンレイクでの生活と、過去の出来事が交差する時、穴掘りの秘密があきらかに。。。(「穴 HOLES」は映画化もされているそう。シガニー・ウィーバーとか出てるみたいです)

『穴/HOLES』予告編 日本語字幕

スタンリーのひいひいじいさんが受けた呪い

男性

「穴 HOLES」の冒頭、スタンリーのひいひいじいさんは豚泥棒とされていますが、若干ニュアンスが違います。

スタンリーのひいひいじいさんであるエリャ・イェルナッツはラトヴィア生まれ。十五の時にマイラという娘に恋をし、求婚します。しかし、大分年寄りの恋敵が現れ、向こうは大きな豚を結納に差し出すといいます。

どうしてもマイラと結婚したいエリャ。知り合いの祈祷師マダム・ゼローニに相談すると、子豚を一頭くれました。そして、この子豚を毎日山の上の小川まではこび、そこで水を飲ませるように言いました。そうすれば、この豚もものすごい大きな豚になると。

ただし、約束として、いつかマダム・ゼローニも山の上の小川まで連れて行ってほしいと言いました。そしてそこの水を飲みたいと。「もしこの約束を破れば子々孫々、悪運に見舞われるよ」ともいいました。

森林

エリャは来る日も子豚に水を飲ませました。そして立派な豚に育ったそうです。その上、豚を運び続けたおかげで、エリャはたいそうたくましくなっていました。

その豚を持って、もう一度マイラに求婚に行ったのですが、あまり頭の良くないマイラはどっちにしようか決めかねます。エリャは「若者の俺と、50過ぎのあいつ(恋敵)のどちらがいいかもわからないのか!?」とマイラに幻滅。

そしてその足で、ふらふらとアメリカに行ってしまいます。アメリカ行きの船の中、ハッとマダム・ゼローニとの約束を思い出すのですが後の祭り。

マダム・ゼローニに山の上の小川の水を飲ませてあげるという約束を破ったばっかりに、エリャや子孫のスタンリーは常に悪運に見舞われることになります。

感想「穴 HOLES」複雑に絡み合った伏線が最後にぴたっとはまる面白さ

アイディア

私は「穴 HOLES」のように、単語一文字系のタイトルにひかれるところがあります。いかようにもストーリー展開が考えられるし、どこか不気味な印象もある。ページをめくるまで方向性の見えないミステリアスさも魅力。

最初読み始めた時に、まず引き込まれるのは、なぜ穴を掘り続けるかというところ。たいてい、穴を掘るなどという時にはなにか目的があってのことなのでしょうが、「穴 HOLES」に関してはそれが一つもでてこない。

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スタンリーが疑問や苦しみを感じながら穴を掘る日々の描写の合間に、ひいひいじいさんが呪いを受けた理由、そしてひいじいさん(ひいじいさんの名前もスタンリー)が大儲けするも女盗賊ケイト・バーロウに身ぐるみ剥がされる話、そしてグリーンレイクでかつて起こった悲劇が描かれます。

一見すると、なんのつながりのないような話が、ラストに近づくにつれて結びつく見事な伏線回収!

私の感想としては、「穴 HOLES」の面白さは伏線回収に気づく瞬間かと。「あっ、あの瞬間がターニングポイントだったのか!」と。今まで描かれてきた、何の関係もないようなシーンが、のちのち効いてくるっていう面白みが良かったです。ひいじいさんの名前がスタンリーってところも、あとあとで重要なポイントになりますよ。

一応児童文学のくくりなのでしょうが、大人でも十分に楽しめるでしょう。ただ、人物の関係性や、過去と現在とのつながりの把握が若干複雑なので、中学生ぐらいからおすすめしたい作品かと。

読み始めは、ただひたすら穴を掘らせられるという不気味さと、その目的についての好奇心で引き込まれ、後半は今まで語られてきたことが一つになる快感で楽しめるでしょう。

ふだん、こういう伏線回収系の本はあまり読みませんが、たまに読んでみると新鮮な驚きがあり、非常に楽しめた作品でした。

読書録
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