スポンサーリンク

天才筒井康隆は世界一の美女をどう表現する?「エロチック街道」

天才筒井康隆先生の世界「エロチック街道」と「ジャズ大名」 読書録

最近読んだ本の話をば。

とある古本屋さんで見つけたこの一冊「ジャズ大名」。

作者は天才にして鬼才筒井康隆氏。

筒井康隆先生の著書はあまり読んだことがなかったのですが、その面白さと奇抜さは有名です。

以前「ジャズ大名」の映画は観たことがあったので、手に取ってみたのすが。

一体なんなんだろう。面白いのかどうなのかすらわからないぶっ飛んだ内容。

ちなみにこの本は多くの短編が収録されており、その中の一つが「ジャズ大名」。カバーのタイトルは「ジャズ大名」ですが、本自体のタイトルは「エロチック街道」という変な構成(これは「ジャズ大名」が映画化されたことによるものかと)。私の買った本は「ジャズ大名」カバーですが、本来は「エロチック街道」カバーで販売されているようです。

タガの外れた天才筒井康隆さんが描くこの一冊を本日は紹介いたします。

スポンサーリンク

筒井康隆の短編集!「ジャズ大名」「エロチック街道」他

アマゾンプライム思い出の映画「ジャズ大名」

私にとって筒井康隆先生原作の映画「ジャズ大名」は思い出の作品。それはアマゾンプライムで無料映画が配信され始めた時期のこと。

今でこそ、ラインナップに多くの名画や最新の作品も入っていますが、当初はなかなか悲惨なものでした。

せいぜい「インディージョーンズ」シリーズが入ってるくらいで、なかなか観たいと思うものがない。

そんな時に見かけたのが「ジャズ大名」。主演は古谷一行さん。

アメリカの魂ともいうべき「ジャズ」と、江戸の香り漂う「大名」のマリアージュ。

一体どんなものなのだろう。まぁ無料だしいいかという気軽な気持ちで借りてみました。

展開も終わり方もカオスな「ジャズ大名」

ジャズ

原作小説ともにそうですが、幕末頃のアメリカで奴隷解放によって行き場を失った黒人が紆余曲折して日本に流れ着くというストーリーです。

その黒人たちは楽器を持っており、最初期のジャズの演奏を行うことができました。

日本に流れ着くも、そこは鎖国の江戸時代。とある藩の地下牢にとりあえず閉じ込められます。不自由だけれども楽器の演奏は許してもらえることに。

音楽に明るい、藩主海郷亮勝は地下から聞こえてくる音楽に興味津々。彼らから音楽を教えてもらうことに。

本来ならば、異人との接触は厳禁でしょうが、そこは幕末。江戸幕府存続の危機でしっちゃかめっちゃかなので、そのへんは緩い。

やがて城勤めの人々がみなジャズに興味を持つことに。そこから怒涛のクライマックスへ。

筒井康隆先生の原作版「ジャズ大名」は文章でリズムよく読ませますし、かなりラストはカオスな状態です。それを映画化しちゃったもんだから、たまらない。

映画版「ジャズ大名」のラストは大物芸人さんも登場。収束などせず突っ走ったまま迎えるオーラスはいい意味で「えっ?終わり!」という感動を与えてくれます。

温泉を美女と行く「エロチック街道」は幻想的

幻想的な筒井康隆の「エロチック街道」

先にも申した通り、この本の正式タイトルは「エロチック街道」。色々と奇抜な短編が収録されています。「ジャズ大名」が映画化しちゃたもんだから、カバーだけすげ替えてる感じです。

この短編集に収録されている、表題の「エロチック街道」という作品もよく分からない物語。

とある交通の不便な街に来た主人公。となり町の根岸舞子まで行きたいが、絶妙に交通手段がない。バスもなけりゃタクシーもない。

ふらっと立ち寄った居酒屋で、根岸舞子まで行きたい旨を相談すると「温泉に乗ればいい」との妙な答え。

その街には地下を流れる「温泉隧道(トンネル)」なるものがあり、根岸舞子まで繋がっているよう。

温泉には女性がいて、その中の一人が付き添ってくれることに。美しく若い女性は全裸になり、主人公に付き添いながら温泉の流れへ身を沈めるのですが。

タイトルこそ「エロチック街道」で、確かに表現もそういうエロ要素はありますが、そんなにどぎついもんでもなく全体的に幻想的な作品。

これはリアルなのか、変な世界に迷い込んじゃったんじゃないか。その辺の境界が曖昧な、幻想味を帯びています。

湯気がもうもうとする温泉の描写と美女の裸体とが相まって、より不思議な世界のイメージが広がるんでしょう。この短編集に収録されている中では一番綺麗な作品でもあります。

収録されている他の短編は色々とカオス

今紹介した「ジャズ大名」と「エロチック街道」はこの本の中ではかなり小説としてのテイを保った作品。「成り立っている」といおうか論理的といおうか。

他の短編もう何が何だか分からないような作品ばかり。文章も構成も、しっちゃかめっちゃか。カオスな状態でありながら、さすが天才筒井康隆と言わざるをえない、そこかしこに知性も感じられる奇妙な世界。

今一体何を話しているのか、次の行の展開すら予想もできないような、着地点すらないようなものばかり。小説ではなく、これはむしろ言葉を使った実験ですね。

わけがわからないし、どんなものだったのか分からないんだけど、作品によって読後に「なんかようわからんが面白かった」という感情だけがにょろり(からみつくように、しみつくように)と残ります。

天才筒井康隆が世界一の美女を文章で表現するとこうなる

それっぽさを詰め込んだ「時代小説」

合戦

「エロチック街道」に収録されている短編作品の中でもお気に入りを二つ。

一つは「時代小説」。時代小説や落語、講談なんかにありそうな文章や言葉遣いを意味やつながりなど無視して構成した作品。

始まりの方からして

「殿には、はや札差で五年、本長押しに七年でござる」帯刀は極秘の絵図面の上へ白髪頭を垂れ、沈痛な面持ちで言った。「このままではお家は水干、奥方様には螺鈿の仕儀と相成り申す」

調べてみると「札差」は米の仲介業者、「本長押」は建築用語で柱を水辺につなぐものとのこと。

こういうそれっぽい言葉を色々組み合わせて、一つのストーリーを作り上げているので、結局のところ何が何だかわからないけれども、ノリとして伝わってくる妙な作品。これも実験的要素が強いけれど、私にはハマりました(「金明竹」など落語のフレーズもたくさん出てきますし)。

優れた言語感覚を持った天才筒井康隆先生だからこそ、この絶妙のバランス感覚を保っているのでしょう。並の小説家なら、わけがわからないだけで、面白味をのっけることはできないでしょう。

この「時代小説」で特にハマったシーンは

道の両側に立ち並ぶ松の木の根かたには、それぞれひとりずつ、持病の癪に苦しむ女中たちが蹲って身もだえ、呻いている。

いったいどうしてこんなわけのわからないシーンをさりげなくぶっこめるのか、筒井康隆先生の天才っぷりが伺えます。

天才筒井康隆が描く世界一の美女山田照子「インタヴューイ」

頭皮マッサージ

もう一つのお気に入りは「インタヴューイ」。何かの番組でしょうか、富富富夫先生なる人物にインタヴューするというこの作品。

この中で富富富夫先生は「世界一の美女は?」と質問された時に山田照子と答えます。天才筒井康隆先生は世界一の美女をどのような文章で表現するのか!

この山田照子の美女っぷりを説明する文章が、本書「エロチック街道」の中でも一番ぶっ飛んだ下ネタ。少々長いですが引用させていただきます(下ネタ注意)。

「まあ聞きなさい。この子が生まれた時、あまり綺麗なので産婦人科の医者がこの子を見ながらオナニーをした。この子の父親はわが子を見てのべつオナニーした為、この子が2歳の時に死んでしまった。
この子が学校へ通い始めてからはもう町中大騒ぎ。小学校最初の授業の時は担任の男性教師がひと眼でこの子を見て驚き、すぐさま教壇の上でここを先途と死に物狂いでオナニーをした。この子が街を歩くと、通行人はもちろんのこと警官までがあわただしくズボンをずり下げ、彼女を見ながらオナニーをした。男たちはみな、彼女をとりかこんで押し合いへしあいしながらけんめいにオナニーをした。(中略)
たいていの男は彼女の服の端に触れただけで射精した。だから彼女は町内をほんの十メートル歩くだけで精液にまみれた。それまで自分を美人だと思っていた娘たちは、たいてい彼女を見るなり下を噛んで死んだ。不細工な娘たちは彼女を見るなりどう見ても人間とは思えぬ自分を恥じて豚になった。にきび面の男生徒たちはとても彼女とは釣り合わぬ自らに絶望して猿になった。(中略)
このような美人をいつまでもひとりにしておいては世の為にならんというので、彼女の母親は適当な男を選び、彼女を早いうちに結婚させた。ところが初夜の晩、新郎は彼女の裸体を見ただけで連続十八回半射精をして死んでしまった。
したがって山田照子はいまだに独身でしかも処女だ。むろんのこと死刑になる気で彼女を強姦しようと挑みかかった男は数知れず。しかしたいていに未遂に終わった。彼女のスカートをまくり上げた時はすでに腎虚になっているからだ」

世界一の美女山田照子を説明する為に並べ立てた、えげつないエピソード。これほど下ネタにまみれた美の表現は見たことがありません。

特に「十八回半射精をして死んでしまった。」という半とはいったいなんなのか。

勝手なイメージですが、この文章を書いている時の筒井康隆先生はノリに乗っていたのでは。天才の脳内では変な物質がどばどば出て、ナチュラルハイ、もしくはゾーンに入っていたのかも(もしくはナチュラルでこれ)。

しっちゃかめっちゃかで、意味不明となりそうですが、文章のリズムといいはこびといいやはりそこはしっかりとした技術があるので、すらっと読めます。

天才にして鬼才筒井康隆、恐るべし。

関連記事:お笑い好きが思う「ドキュメンタル」テレビで観れない下ネタの攻撃力

タイトルとURLをコピーしました