2019年の年の瀬。大河ドラマ「いだてん」が最終回を迎えました。
視聴率問題をはじめ、いろいろと言われながらも大円団で締めくくった最終回。一年間いだてんを見続けた感想とともに語りたいと思います。
「いだてん」最終回と全体の感想。日本の復興とオリンピック
「いだてん」最終回を迎えました
昨夜、東京オリンピックを題材としたNHK大河ドラマ「いだてん」が最終回を迎えました。
放映されているドラマを見続けたのは随分久しぶり。いや、大河ドラマに関しては最初から最後まで見続けたのはこれが初めてでした。
放映当初から、視聴率問題などで騒がれたいだてん。結果として、大河史上ワーストの視聴率となってしまったようです。
出だしが悪かったのが災いしたのでしょうね。たしかに、当初は明治大正と昭和の行ったり来たりや、途中挟まれる志ん生パートなどに面食らって、展開がわかりづらいということもありました。
それと、前半の主人公である金栗四三があまり有名でないなども、影響があるでしょうね。結果、当初離れていった視聴者を取り返せぬまま迎えた最終回。
(ただ、視聴率に関しては録画視聴していた人も多くいると思います。私も時間的に難しいものがったので、その多くは録画視聴でしたし)
ですが、最後まで見続けたものとしては、じーんと感動のある素敵な最終回でした。
いろいろな人の思いをつなぎ、東京オリンピック開催
思えば、最初のころ、オリンピックという言葉もまだ知られていなかった日本から、金栗四三と三島弥彦の二人が、遠くストックホルムオリンピックに出場するというところからのはじまり。
ストックホルムオリンピックでの日本の成績は世界情勢も全くわからず、記録も惨憺たるものでした。しかしいだてんの回をすすめるごとに、日本人選手の成績はめきめきと向上していくことに。
金栗も現役から後進の育成へ。次の世代、次の世代へとバトンは受け継がれていきます。
スポーツ国としての日本の台頭とともに、東京にオリンピックを誘致しようとする嘉納治五郎たち。しかし、世界情勢、日本の政治情勢から何度も流れる中で立ち消えていく幻の東京オリンピック。
そうした、自分たちではどうしようもない国際情勢にもめげず、敗戦を乗り越えた先の1964年の東京オリンピック。
いだてん最終回では、東京オリンピックの開会から閉幕までの様子が駆け足で描かれましたが、それもまたよかった。
東京オリンピック自体に物語を割くよりも、そこに至る過程に、どれだけの先人の苦労と努力、思いが詰まっているのかというのをたっぷり見せたところが、私的に感動のポイントでしたね。
特にブルーインパルスが東京の空に五輪を描いたシーン。これまでの、特に嘉納治五郎さんを中心につながれてきたバトンが、ようやく一つのゴールを見せた感じで感動しました。
志ん生のパートは必要だったのか?
東京オリンピックという金栗四三や嘉納治五郎、田畑政治という一連の流れがいだてんのメインパートでした。
一方で、そのサイドストーリー的に語られてきた古今亭志ん生のパート。正直、当初はこの志ん生パートが不人気の筆頭にも挙げられていましたね。
たけしさんのセリフが聞きづらいであったり、東京オリンピックと関係ないストーリー展開だったりと、視聴率低下の一因だったのは否めません。
しかし、わたしがいだてんをみるきっかけになったのは、この志ん生。私のように落語好きな人は「何?志ん生がドラマに?しかもたけしさんだって!」ってな感じで見始めた人も多いはずです。
極めて私的な感想ですが、落語好きとしては、この志ん生のパートはあってよかったなと思っています。
参考記事:「いだてん」注目!たけし演じる志ん生がわかる「やっぱ志ん生だな」
ごりんのしくじりと富久
いだてんのストーリー展開で、扱いが難しいと感じたのはごりんですね。神木隆之介君が演じている志ん生の弟子。
たくさん出てくる実在の人物の中で、ストーリーの中心的立ち位置なのに、架空の人物。大河で架空の人物って、正直ちょっとしらけた感じもありました。
最終回の目前、ごりんは志ん生のもとから去ったのも、いまいち動機がわかりませんでした。恩返しとかいろいろ言っていましたが、一体何がしたかったの?
そんなごりんですが、いだてん最終回では国立競技場から走って、芝の志ん生独演会にかけつけてしくじりを許されます。
まーちゃんの「俺のオリンピックが皆のオリンピックに」という台詞も感慨深いけど、
ごりんのパートも凄い。国事であるオリンピックを
1人の青年の人生と重ね、それを富久で繋いで完走させた。
選手や関係者じゃなくとも、「俺のオリンピック」があるメッセージ。クドカンお見事!#いだてん
— ざきえ (@zakie_no29) December 15, 2019
「志ん生の富久は絶品」という展開のオチがようやくここでついた感じ。そのために、わざわざごりんは志ん生の元をはなれ(しくじり)たんじゃないかと思うぐらい。
一応いだてんでも、落語の富久の話題は何度か出てきていますが、ストーリーをちゃんと頭に入れておかなかったら、このシーンの面白さはわからなかったと思います。
(最初の頃に、若き日の志ん生が橘家圓喬の俥をひきながら富久を稽古するシーンがありますが、私的にはあそこは「反対俥」じゃないかなと疑問に思ってましたが)
このごりんというキャラクターの賛否は難しいところ。このサイドストーリーを雑味ととるか、旨味ととるかは観た人次第ですかね。
感想「いだてん」は面白かった!
いだてんを最初から最後まで見通した感想。うむ、面白かった!
えっ?感想がシンプルすぎる?いいんです。面白かったものは面白い。それでいい。
そもそも大河を観たことがなかったので、他と比べようがないのですが、ドラマ、特にコメディドラマとしてみるとすごく面白かったです。
一話一話、腕のある俳優さんたちが歴史上東京オリンピックに関わった人々をコミカルに演じる。こういうのって、大河クラスの豪華さでないと実現できないことですし、宮藤官九郎は役者さんをうまくストーリーにはまらせていたと思います。
こういう芸が細かいところがいいね。
熱意を感じる。クドカンのタクシー、
トヨペットクラウンのボンネットに、
ブルーインパルスの五輪が映っている#いだてん pic.twitter.com/LniHmckPw1— カワイ (@kawaihidetoshi) December 15, 2019
特に、昭和に入ってからの田畑政治さんを演じる阿部サダヲさんは、情熱とすっとぼけ具合がちょうどよく、ドラマのテンポが一段階上がったような気がしました。
脚本も宮藤官九郎さんでよかった。この東京オリンピックまでの流れを、コメディー色なしでもっていくとかなり厳しいものがあったかと。適度なコメディタッチが、毎回「今日も面白かった!」という見応えを与えてくれました。
いだてん完走。全回見届けたのは実に『独眼竜正宗』以来。あのとき小学生が持った「勝新何言ってんのかわかんねえ」の感想を、今の小学生がそのままたけしに抱くのでしょう。それはおいて、オリンピックと東京という街がどう変化していくかを味わい尽くす、二度とお目にかかれない大怪作でありました。
— 万城目学 (@maqime) December 15, 2019
コメディだけでない、いろいろ考えさせられるテーマも。オリンピックは政治利用であってはならないなどは、現在の実情と照らし合わせても深いものがありました。
特に、田畑さんが嘉納治五郎に問いかけた「いまの日本はあなたが世界に見せたい日本ですか?」というもの。1940年の幻の東京オリンピック。政治情勢不安な日本を憂いた田畑さんの言葉。これってそのまんま2020年の東京オリンピックにもあてはまるかと。
ただ、過去のノスタルジーに浸るだけではない。いだてんというドラマは、先人に習い、未来にどう繋げていくかという我々一人ひとりが考えるべきテーマをはらんだドラマでもありました。
思えば、大河ドラマというものは先人たちの生き様に感銘をうけて、それを自分たちの生活に反映させるものが上等なものではないでしょうか。そういった意味では、いだてんは大河ドラマとして上等な面白い作品であったといいたいです。