以前のことですが、友人とみうらじゅんについて話していました。
みうらじゅんといえば、マイブームやゆるキャラをはじめ、数々の日本サブカル史に功績を残してきたお方。
中学生から続けているというエロスクラップはもはや、ある種の求道的な雰囲気さえあります。
サブカルの権化とでもいいましょうか。決してメインストリームにはなりえないんだけれどそこが良い。
あってもなくも良いことなんだけれど、ないと日本のカルチャーが面白く無くなる。みうらじゅんのやっていることってそんな感じがします。
そんなみうらじゅんのことを考えていた時に、ふと「みうらじゅんって現代の柳宗悦なんじゃない?」ってイメージが。
似ても似つかないようで、意外とありうる考え方なのではないかと思ったので、少し詳しく書いてみました。別に生真面目な論考などでもないのでご笑納いただければ幸い。
新たな価値を見出し続けるみうらじゅんは現代の柳宗悦である!
民芸運動の父、柳宗悦とは?
柳宗悦(むねよし、そうえつと表記されることも)とは明治から昭和にかけて活躍した思想家であり哲学者。息子さんにはインダストリアルデザイナーで有名な柳宗理などがいます。
特に代表的な柳宗悦の活動に民芸運動というものがあります。
民芸運動とは、それまでたいして気にもとめられてこなかった、日本の焼き物や漆器、日常的に使われている雑貨などに用の美を見出し、それらを美術作品などと同様に美的価値から評価し直す運動を指します。
現在でも民芸と言われれ、受け継がれている考え方。それまで当たり前に身の回りにあり、特に気にもとめなかった道具類などに価値観を見出したところに柳宗悦の偉大さがあります。
ゆるキャラ、地獄表、カスはが。新たな価値を見出し続けるみうらじゅん
さて、その柳宗悦たりうるんじゃないかと、ふと思ったみうらじゅん大先生。
みうらじゅんの功績も、普段特に気にもとめられていなかった物事に新たな価値を見出している部分があります。
たとえば代表的な活動であるゆるキャラ。本来は各ご当地にあった、デザイン性や存在そのもの、使われ方すらゆるゆるのキャラクターを取り上げたところから始まりました(私的に、現在のゆるキャラと呼ばれるものは気合が入りすぎて面白くない)。
他にも過疎地などにある、数時間に一本しかバスがこないようなところの時刻表を「地獄表」としてみたり。
各ご当地のしょうもないお土産ポストカード(ハガキ)をカスハガとして再評価してみたり。
そういう一見価値のないものに、みうらじゅんは地獄表やカスハガという名前を与え、そして収集しまとめて発表することで「あれ?それって面白いんじゃない?」的な新たな価値が発生するのです。
みうらじゅんは現代の(ある意味)柳宗悦
みうらじゅん、柳宗悦とも、今まで気にもとめられてこなかったような身の回りにあるものを再評価し「これって良いもんですよ!」と発信し続けてきたという共通点があります。
そして、それが今までになかった価値観に発展し、フォロワーができることで一般に周知され、文化の点でも新たな地平が開かれるという流れになるのです。
柳宗悦が民家で使われているような器の価値を再評価することがあったからこそ、現代日本においてプロダクト、インダストリアルデザインが大きく発展していきました。
ゆるキャラにしたって、考えてもみてください。十年ぐらい前までも地方にキャラクターは存在しましたが、誰も気にも留めてなかったはずです。それが今では雨後の筍とごとく、我々もと主張するご当地キャラクター(ゆるキャラ)の数々。
みうらじゅんが新たな価値観を見出したおかげで、全国規模でいうとかなりの額の経済効果もあったはずです。
(柳宗悦+山東京伝)×サングラス=みうらじゅん
みうらじゅんに関して言えば、かなりマルチな活動を続けられています。本職が漫画家、イラストレーターであり、音楽もやっているし、とにかくマルチな才能を持っている。
そう考えた時に、これって江戸時代の戯作者、山東京伝(さんとうきょうでん)にも近いぞとのひらめきも。
山東京伝といえば、江戸時代の戯作者で浮世絵や現代で言うところのプロデューサー業のようなものなど、とにかくマルチに活動をした方。
文学的、アート的、サブカル的な活動にまで山東京伝のマルチな才能は発揮されており、様々な作品が残されています(私が一番好きなのは山東京伝が構成などに参加したと言われる「てぬぐいあわせ」)。
みうらじゅんてそういう要素も強いので
(柳宗悦+山東京伝)×サングラス=みうらじゅん
みたいな感じじゃないかとも思いました。
つまりみうらじゅんにはこれからも活躍し続けて欲しい
色々と愚にもつかないことを並べてきましたが、そういう過去の偉人と照らし合わせた観点でみうらじゅんを見てみると、また別の面白さが再発見できるかもしれません。
変なこと、サブカルなこと、わけのわからないことをやっている人という点で見るのではなく、新たな文化開拓者、価値観の創造者としてみるとなかなか尊いものがあります(ないか?)。
もちろん、みららじゅんがこれまで推してきてコケたものだって山ほどあると思いますが、これからも変な大人の代表(そろそろ初老ですが)として日本のカルチャーを支え続けて欲しいものです。
もしかしたら100年後ぐらいに。日本の美術史、文化史、歴史において偉大な功績を残した偉人としてみうらじゅんの名がのこるかどうかは、また別のお話。
【関連記事】:天才筒井康隆は世界一の美女をどう表現する?「エロチック街道」