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「わざと忌み家を建てて棲む」三津田信三のホラーは設定もやばい

【読書録】三津田信三さんの「わざと忌み家を建てて棲む」の感想読書録

面白かった本のご紹介をば。

本を選ぶ時、人気の作品、好きな作家さんの作品、表紙が好みなどいろいろ基準があります。

そんな中で、タイトルに惹かれて買うというのも皆さん多いのでは無いでしょうか。

私の場合で言えば、特にホラー小説などはタイトルに惹かれますね。

タイトルという短い文字数の中で、ホーラ好きを惹きつけるワードを組み合わせる。

そういうタイトルも含めて、好きな作家さんに三津田信三さんがいます。

タイトルも、内容も、登場人物や土地名にいたるまで、全体が禍々しくて怖い。

本日紹介するのは、そんな三津田信三さんの「わざと忌み家を建てて棲む」です。

以下ネタバレを含む部分もありますので、ご了承ください。
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「わざと忌み家を建てて棲む」三津田信三が描く、幽霊屋敷の物語

ホラー小説家、三津田信三さんの魅力

中、高校時代にはとりわけホラー小説にはまり、とりわけ角川ホラー文庫を読み漁っていた時代がありました(リングとか死国とか映画で流行っていた時代です)。

20歳を過ぎてからしばらくホラー小説は読んでいなかったのですが(映画の方は結構観ていましたが)、最近ハマったのが三津田信三さん。

ホラーとミステリーを融合させた作風で、実際におこった事件のような世界観も特徴です。

三津田信三さんの「刀城言耶シリーズ」などは昭和のある時代に、実際に地方の寒村でこんな怪奇かつ猟奇的な事件がおこったのではないかというぞわぞわとした感じを抱かしてくれます。

かつ、それは人為的に起こったものなのか、超常的な怪奇なのかはっきりとしない怖さも魅力。曖昧って怖いんです。

今回紹介する「わざと忌み家を建てて棲む」も、「まさしく三津田信三!」といった不気味な怖さがぎゅうぎゅうにつまった作品。

「わざと忌み家を建てて棲む」のあらすじ

不気味

「わざと忌み家を建てて棲む」は「どこの家にも怖いものはいる」という本の続編です。

主人公は三津田信三ご本人。怪談好きの編集者三間坂とともに、家にまつわる怪談の謎に迫っていくという内容。

はじまりは三間坂の実家に、川谷妻華という女性がもちこんだ手紙がきっかけ。手紙には、過去に「烏合邸」という建物についてのことが書かれていました。

「烏合邸」という建物。それは、いままで殺人、自殺などのいわゆるいわくつきの家や部屋をあつめ、つなぎ合わせて一つに建て直したという禍々しい邸宅。

興味をかられた三間坂が家を探すと、その烏合邸に関する資料が出てきます。どうやら「烏合邸」の主人はお金を出してそこに住む人を集い、その記録をつけさせていたよう。三間坂のみつけた資料とはその「烏合邸」に住んだ人々の記録でした。

日記、手記、録音など媒体は様々ですが、「烏合邸」を構成する各部屋(屋敷)に関わった人々の怪異の記録が。

黒い部屋に住んだ母と子、白い屋敷に住んだ作家希望の男、赤い医院を調べた女子大生、青い邸宅で実験を行った超心理学者。

それぞれにおいて、尋常ならざる記録が記されており、それを読みすすめる三津田信三さんと三間坂の身にも怪異が。

「烏合邸」とは何か。なぜいわく付きの建物を集めて、そんな邸宅を建てたのか。そして、そこで何が起こっていたのか。

怪異と危険にさらされながらも、三津田信三さんがその秘密を解き明かそうとする幽霊屋敷もののホラーミステリーです。

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実際に怪異が起こるかのように

「わざと忌み家を建てて棲む」の中では「烏合邸」の秘密を解き明かそうとするごとに、三津田信三さんと三間坂の身に怪異が降りかかります。

また、少しでも関わった人にも同様のことが。たとえば赤い医院の記録はテープの形で残っているのですが、文字起こししようとしただけで怪異。

「わざと忌み家を建てて棲む」の本文中にも「読みすすめるのに注意」的なことが何回か出てきます。これを読むだけで、何か怪異やよからぬことが起こる可能性がありますよ、と。

この現実世界と小説がリンクするような設定は、読んでいてもぞわっと怖い。

実際に起こったような設定に作り上げられており、フィクションだということはわかっているのに怖い。

特に「烏合邸」という幽霊屋敷もの、家や部屋にまつわるホラー小説なので、読んでいて別の部屋にふっと何かの気配が感じる気がして、余計薄気味悪い。

怪異?偶然だとは思いますが

夜に寝る前にホラー小説を読む

「怪異が起こる」と本文中にはありますが、そこは小説。そんなことは実際には無いと思います。思いますが。

私の場合なのですが、「わざと忌み家を建てて棲む」のラストの方を読んでいたのがちょうど5時ぐらいでした。

私の住む地方では5時になると街中のスピーカーから5時の音楽が流れるとともに、家の防災無線からも同じ音楽が流れます。

そのラストを読んでいた時に、防災無線からも5時の音楽が流れたのですが。

普段は普通に流れるのに、その日だけ電波の調子が悪いような、途切れ途切れな感じの放送になっていました。

思わずそばにいた妻に「普段もこんなに電波悪い?」って聞きましたが、普段は滅多にそんなことは無いとのこと。

きっと偶然だとは思うのですが、読んでいたものがものだけに薄気味悪かったです。

「烏合邸」の設定がたまりません!

幽霊屋敷、廃屋

「わざと忌み家を建てて棲む」にでてくる最強に禍々しい家「烏合邸」。

いわゆる事故物件と呼ばれる建物をわざわざ移築して、一つにつなぎ合わせて立て直すという設定自体にたまらないものがあります

幽霊が出るとか、殺人鬼が潜む家とかの設定ならよくある感じですが、「烏合邸」のような設定ははじめて。

殺人があった家を舞台にしただけでも怖いのに、そんなのを集めて一つにしたなんて。事故物件のキメラ、もしくは事故物件のキングスライムのようなもの(上手い例えではありませんが)。

そんな恐ろしい物件をを一つに集めて建て直したということは、そこに何かしらの目的があったはず。おそらくはかなりサイコな目的であろうそれが何なのか(その目的が気になって本から目が離せなくなる)。

よくもまぁ、こんな好奇心を刺激する設定が思いつくものだなと、三津田信三先生のホラー脳に感服です。

「烏合邸」にも似た狂気の邸宅「ウィンチェスター家」と「二笑亭」

実際に幽霊屋敷と呼ばれるようないわくつきの建物は様々な地方にありますし、一昔前は夏のホラー番組の格好のネタにもなってました(山奥にある廃ホテルとか)。

しかし、さすがに「烏合邸」のような殺人や自殺などいわくつきの物件を一つにまとめたような建物というのはないでしょうね。

ただ、発注者自信が狂気に染まった状態で建てられた家や邸宅というのは過去に実際にあります

「わざと忌み家を建てて棲む」の中にも紹介されていますが、アメリカの「ウィンチェスター家」や日本の「二笑亭」などがそれ。

「ウィンチェスター家」とはウィンチェスター銃で有名なウィンチェスター家に嫁いだ嫁が悪霊を恐れ38年間増築し続けたという奇怪な館。

「二笑亭」とは精神を病んだ主人が、これまた己の思想を具現化するために建てた奇怪な屋敷。

残念ながら「二笑亭」のほうは今はありませんが、「ウィンチェスター家」のほうはまだ残っており見学もできるそうです。

どちらも常軌を逸した意思で建てられたという点。その理解しがたさには「烏合亭」にも通じるものがあるかと思います。

「ウィンチェスター家」については「ジョジョの奇妙な冒険」の荒木飛呂彦先生が、「二笑亭」については「ゲゲゲの鬼太郎」の水木しげる先生が漫画で描いています。

「わざと忌み家を建てて棲む」では紹介しきれなかった「ウィンチェスター家」と「二笑亭」がいかにして建てられたのかがわかるので、こちらもおすすめです。

(ネタバレ含む)「わざと忌み家を建てて棲む」のラストについての感想

サイコ

いわく付きの事故物件を寄せ集めて建てられた「烏合亭」にまつわるホラーが描かれた「わざと忌み家を建てて棲む」。

ラストについてはかなり淡白な感じだなという印象を受けます。ネタバレになりますが、そもそも「烏合亭」が現実に存在するのかしないのか、語られた人物の実在すら曖昧なまま終わります。ラストまで、あらゆることがはっきりとしない終わり方。それぞれの家で何があったのかも結局わからず、大雑把な推論のみの展開。

三津田信三先生の世界観や展開は大好きなのですが、時々謎がほとんど回収されないまま終わることも。

読み進めていて「えっ、残りページ数がこれだけしか無いのに解決するの?」ということもしばしば。もちろん、着地点はあるんですけどね。

そのすっきりしないところも想像力をかきたてられて怖く、ホラーとして魅力的でもあるのですがこの「わざと忌み家を建てて棲む」に関しては、謎解き部分をもっと欲しかったなぁというのが私の感想です。

特に青い邸宅の章などは、過去にそこで何が起こったのか、もう少し突っ込んで説明して欲しかった感も。

ラストについては物足りないものもありましたが、それでもホラー小説としてはがっつりと怖かったですし、かなり面白かったです。先にも書いたように、現実とのリンクする感覚がかなり恐ろしい。ある意味「リング」的な怖さ。

読み始めると「烏合亭」の謎について気になり、私同様一気に読み進めることになるかと。

ただし、明るい時間に読むのをおすすめします。暗い時に読むと、いろいろと、気配が気になってきますよ。

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読書録
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