面白かった本のご紹介をば。
漫画にも色々ジャンルがありますが、その中でも自分の私生活や体験記を漫画にする作家さんもいます。
体験ルポ漫画もこういうのに入るのかな。昔よりもその手の漫画を作家さんが増えてきたような。
そういう私生活を漫画にする作家さんの中で、最も有名な人に西原理恵子先生がいます。
毎日新聞で連載していた「毎日かあさん」をはじめ、自分の家族のこと、毎日の生活、体験ルポなどジャンルは様々。
最近では高須クリニックの高須医院長との恋仲などでもテレビで取り上げられていたりしていますね(高須クリニックのCMにも一瞬西原先生がでてきます)。
西原先生の漫画を見ていると、人生良いことばかりじゃなく、修羅場もある。しかしそれを乗り越えるための強さやしたたかさが必要なんだなと考えさえられことも。
可愛さと激しさのないまぜになった絵柄、どんなヘビーなことでも笑いに変える凄みとしたたかさ。
そんな西原理恵子先生が人生の中で学んだ、ヘビーだし綺麗事じゃないけれど、したたかな名言を集めた「洗えば使える泥名言」の紹介です。
西原理恵子が人生から学んだ名言「洗えば使える泥名言」
西原理恵子先生の漫画を読んでいるとよりわかる
私も西原理恵子先生の漫画が好きで「まあじゃんほうろうき」、「毎日かあさん」、「ぼくんち」、「できるかなシリーズ」、「ダーリンは70歳」など読んできました。
どれもこれも強烈な内容のものばかり。ギャンブルで数百万円すったり、FXで大損したり、巨額追徴課税を踏み倒したりとなかなか一般の人では体験できないようなことが漫画になっています。
その一方で「毎日かあさん」などでは家族のこと、DVやアルコール依存症の夫(のちに死去)のことなど胸の詰まるような私生活のことも赤裸々に描いています。
前の旦那さん(鴨ちゃん)がなくなった前後の頃はかなり辛そうでしたが、それを乗り越え現在では高須医院長との年の差恋も順調のよう。
この「洗えば使える泥名言」にはこれら漫画の中でよく出てくる人々が放った言葉(名言?)の数々が掲載。
正直、どうしょうもないような汚れまくった言葉でも、洗って別の角度から見てみると、したたかに人生を生き抜くための力強さのような名言に見えてくるから不思議。
西原理恵子先生の漫画を読んでいる人には、より「名言」のバックグラウンドなどが理解でき、すんなり入って来やすいかと思います。
世の中綺麗事ばかりでない
とかく、今の日本ではモラルが求められる時代。かなり厳格なルールのもとで社会生活を営むことを当たり前とされています。
そんな中この「洗えば使える泥名言」で名言とされる言葉を放った人々は、そんなモラルやルールを意にもかえさないような人ばかり。
いわゆるところの「普通の生活」とは無縁のような人々の言葉が出てきますが、西原先生の洗浄によって、それらがしたたかな強さを持った名言へと生まれ変わっています。
金儲けのために何でもやる人、前科持ちの人、借金を平気で返さない人、ダメンズやダメンズウォーカーなどなど。
周りにいたら迷惑この上無いし、ぱっと聞いた限り「なんてずうずうしい(適当な)こと言ってるんだ!」ってなりそうな言葉も多いです。
でも考えてみれば、世の中綺麗事だけではなりたっていません。どうしょうもない人や状況はたしかに存在して、時にそれを乗り越えていかねばならぬ時も。
そういうモラルやルールが通用しないシチュエーションの中で、本書にでてくるような「泥名言」はかなりしたたかな強みになると思います。
私が気に入った西原理恵子先生の泥名言
・「どうせ海賊版出るんだから、先に出しましょう」
本書の「仕事の名言」のP19に出ていたもの。エロビデオを売っている会社が、わざと画質を劣化させた自家製海賊版もいっしょに売り出したという話。「コピー商品はいけない!」と声高に叫んだところで、どうせ出されるのだから、先にやっちゃえこっちが儲けちゃえっていうしたたかさが好きです。本書の中でいちばん好きな名言。
・「六はいないか?いなきゃ四でもいいぞ!」
乙武洋匡さんの「五体不満足」が大ヒットした時に、西原先生のお友達の末井さんが二番煎じを狙って「六(四)体不満足」を出そうとした時の言葉。恥も外聞も無いですが、売れれば官軍というしたたかさはすごいです。こういうバイタリティーのある発想はモラルがあると出て来ない。
・「前科とお金とどっちが大事?」
上記の末井さんは前科持ち。エロ本で局部隠さず出版して逮捕。だけど売れるもんだから繰り返す。「前科なんていくら増えてもいいじゃない。お金がもうかるんですよ」とのこと。真似できないし、したいとも思いませんが、こういう強烈な人もいるんです。
・「今日は天気がええけん、今日いかしちゃる。」
西原さんのしりあいのおばあさんの名言。物音がしたのでドアをあけると旦那さんが脳梗塞で倒れていたそう。しかし何もせずそのまま逝かせてあげたのだとか。理由は「天気がいいから」という一点。ネイティブアメリカンのよう。これも綺麗事では無い、なにか達観したものを感じます。
・「なんちゃやない。」
沖縄でいう「なんくるないさぁ」のようなもの。どんな時でも使える、勇気が出る魔法の言葉。
西原先生の今の心情がわかる
漫画では描かれない、西原先生の現在の心情がいろいろとわかる本でもありました。
元夫の鴨ちゃんに関しては
鴨ちゃんが死んで10年近く経ちますけど、悲しみとか喜びとか、そんなものが全部洗い流されて、憎しみだけが残ってしまいました。もう、腹の立ったことしか覚えてない。
との記述。これも世の中綺麗なことばかりではないなと思わされる一文でした。過去は時間が経てば美化されるというものばかりではない。でもそうであっても現状不幸せというわけではない。
西原先生の生活においても、お子さんたちはすくすくと成長し、息子さんは海外留学をするなどしっかり育っている。娘さんはもっか反抗期中ですが、自分の道を歩もうという自立心が芽生えている。
恋愛においては高須クリニックの医院長と、年の差はあるも素敵な時間をすごされているよう。
西原理恵子先生の洗浄力で名言たりうる
本当に、いろいろ苦労もされてきている西原先生だからこそ、「洗えば使える泥名言」にあるような飲みこみにくい言葉でも成長の糧にしてこられたのかと。そして少しずつしなやかな強さを身につけてこられたのでしょう。
本書にある言葉の数々は、西原先生の解説無しでは受け付けづらいようなものばかり。しかし西原先生の洗浄のおかげで、人それぞれに学ぶべき、したたかさが見つかるかと思います。
通常の名言集とはかなり毛色はちがいますが、これも人生に役立つヒントにどうぞ。