都会で生きる人々にとって、少なからず田舎でのスローライフに憧れたことがあるのではないでしょうか。
毎日の通勤電車、人混み、ビルや店が立ち並ぶ景観。
もちろんお金を出せば様々な癒しのサービスは手に入りますが、そういうのではない日常的なのんびりが欲しい。
疲れが溜まれば溜まるほど、そういう生活に憧れが募るのだと思います。
今回紹介するのはのんびり田舎暮らしを手に入れた早川さんが主人公の「週末、森で」。
田舎暮らしを描く漫画「週末、森で」のおすすめポイント
都会を離れての田舎暮らし漫画「週末、森で」
作者は益田ミリさん。漫画やエッセイなどを手がけられており、のんびりした作風の中にもしっかりと芯の強さが光る作家さんです。
「週末、森で」は主人公翻訳家の早川さんが都会を離れ田舎暮らしをする様子を描く漫画。
スローライフとは一味違い、農業をやるとかDIYを張り切るとかではなく、田舎にある自然やその時間を楽しみながら生活を送るというもの。ある意味正しいスローライフ。
せっかく都会を離れて田舎に来たのだからといって野菜とかを自分で作るわけでなく、お取り寄せを楽しんでいます。どちらかといえばのんびりライフ。
いわゆる「こうしなければならない」という固定観念に縛られない人。
この早川さんの気負わなさがとてもいいです。気負わないからこそ大切なものが見えている人、本当の意味での自由を知っている人って感じ。
そんな自由な田舎暮らしを送る主人公の早川さんのうちに週末ごとに訪ねてくる、都会暮らしのお友達のマユミちゃんとせっちゃんの三人の様々な楽しみごとで「週末、森で」のストーリーは展開していきます。
田舎暮らしの中での気づき
早川さんのお友達のマユミちゃんとせっちゃんは都会ぐらし。
週末に早川さんのところに遊びに来ては、田舎の生活を満喫する早川さんから新しい経験や遊びを知ってリフレッシュしていきます。
「週末、森で」の展開として、一話ごとに前半はマユミちゃんやせっちゃんが遊びにきて早川さんとの週末を楽しみ、その中でいろんな気づきを得るというもの。早川さんがポイントポイントでなんか良いこと言ってくれるのです。
後半部分ではマユミちゃんとせっちゃんが都会に戻り、様々日常の嫌なことや煩わしさにぶつかります。
そうした雑事にぶつかった時に、早川さんと過ごした週末で気づいたことを糧にうまいこと乗り越えていくという話の流れです。
主人公の早川さんは特に意識して発している言葉ではなく、毎日の田舎暮らしの体験から感じた、気づいたことを言っているだけなのでしょう。
自然の摂理やゆったりとした時間の流れから学ぶといいましょうか。ふだんあくせくしている状態ではぜったいに気づけないことを週末ののんびりタイムで気づくというものです。
「週末、森で」をはじめとして益田ミリさんの描く絵は線も少なく、やわらかく、とてもマイルド。
このゆったりとした時間がながれる内容にとても合っていますし、だからこそ登場人物たちが交わす会話の奥深さもじっと染み込んできます。
寝る前読書におすすめの理由
「週末、森で」で描かれる田舎暮らしがちょうどいい
「週末、森で」の一番の魅力はなんといっても早川さんの気負わなさだと思います。
たとえば都会から田舎ぐらしに移ると、いかにも田舎暮らし的なことをするのだろうというイメージがあります。
自給自足で食物を作り、毎日自炊は当たり前。そういう固定観念。
実際に田舎移住の人たちの中でもこういうことを一生懸命やりすぎて疲弊して都会にもどっちゃうっていうのも見聞きします。
でも早川さんは、野菜をお取り寄せすることもあれば、友人が手土産に持ってくるお洒落なお菓子などを楽しみにしています。
「週末、森で」で描かれている、早川さんのバランス感覚が見ていてなんともよく、ちょうどいい理想の田舎暮らしを送っているなぁって感じがします。
(そもそも早川さんは懸賞でハイブリッドカーが当たり、都会では駐車料金が高いので田舎に引っ越したという思い切りの良さと気負わなさ。)
別に今の世の中流通が発達しているのだから、田舎にあるものだけで生活しなければならないことなんてないのです。
欲しいものによって、地のものを買ったりネットで買ったりとの使い分けで一番快適なちょうどいいバランスをさぐっている感じが良いです。
複数の働き方で糧を得る生き方
また、主人公の早川さんは毎日の糧も本業の翻訳だけでなく、着付けの技術があるので月一で着付け教室を開いたりとできることでちょっとづつ得ています。
近所の中学生に勉強を教えれば、お返しにそこのおじいさんが畑を耕してくれるなどなにかと技術が糧に変換されていきます。
がっつりと「儲ける」ではなくまさに「糧になる」といった感じ。
ちょっとずつ複数の糧がより集まって、田舎暮らしの生活に必要なものがうまいことまわっていっています。
このへんも「働かなきゃ!ガッツリ儲けなきゃ!」という気負いのなさが心地よく、見ていてリラックスしていきます。
私も田舎暮らしを送っているもので
私も田舎生活を送っているものの一人。
早川さんの楽しみも不便さもわかります。
私は自営業でデザイナーをしているのですが、そのかたわらお土産物を作って観光施設や道の駅で売ったりなど、できることを組み合わせて糧を得ている感じです。
友達などでも農業の傍らガイドや民泊など自分の持っているスキルを組み合わせて複数の糧を得ながら暮らしている人が多いです。
一つの本業でがっつりと働くのももちろん素晴らしいですが、複数のことをやっているからこそ身につけられるバランス感覚や楽しさっていうのもあります。
いろんなものがお互いを補完しあって、どんどん良い具合に成長していく感じですね。
もし都会から田舎暮らしを目指す人は「週末、森で」の早川さんのようにいろんなことを組み合わせながら少しずつ糧を得て生活していくっていうのがこれからの世の中ぴったり合うと思います。
(この複数糧を得るという視点で、「月3万円ビジネス」という本があります。一つのビジネスにつき3万円を目指すという糧を得るという考え方にあった本。たしかにこういう収入の得方もあるなと新たな視点が得られました。田舎暮らしを考えている、実践している人に是非読んでもらいたいお勧めの一冊です。)
もしあながたが都会の暮らしに疲れているのであれば、気負わない田舎ライフを実践している早川さんの生活に思いをはせ、寝る前に毎日のライフスタイルを少しだけ見直してみるのもオススメです。
もちろん気負わない程度にですよ!
こんな人におすすめ
- 田舎暮らしに憧れがある人
- 自然の景観が好きな人
- 毎日の生活に少し疲れている人
- 考え方をやわらかくしたい人
- ほんわかした絵柄が好きな人
枕元に、こういうよいバランス感覚のまったり本を置いておくといいですよ。
田舎暮らしを楽しむ早川さんの気負わなさとライフスタイル、そして益田ミリさんの絵柄に是非癒されてください。
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